« 2006年5月 | トップページ | 2006年7月 »

カエサル 『内乱記』 (講談社学術文庫)

ポンペイウスとの内戦の経緯を記したカエサルの現存するもうひとつの著作。

耳慣れない部族名が頻出する『ガリア戦記』よりいいかと思ったが、かえってこちらの方が読みにくく感じた。

とはいえファルサルスの決戦へ徐々に盛り上がっていく叙述はさすがに真に迫るものがある。

古典的著作の中でも、自分のような初心者にとって、「読める古典」と「読めない古典」があるが、これは前者。毛嫌いせずに手にとってみましょう。

| | コメント (0)

カエサル 『ガリア戦記』 (講談社学術文庫)

高校世界史でもタイトルを必ず暗記させられる古典中の古典。だが古典といっても、これは初心者でも読もうと思えば読める。

なお塩野氏の『ローマ人の物語』の該当巻を先に読んでおいた方がいいかもしれない。

巻末に当時のガリアの部族分布図が載っているので、面倒臭がらず、必ず本文中の部族の位置関係を把握しながら、着実に読み進むこと。

一つ間違えば、指揮下の軍団もろとも全滅しかねない危険を克服して、ガリア征服を成し遂げたカエサルの冒険譚に手に汗握る。

本書によって、翻訳を通じてでも、カエサルの簡潔、正確、端正な文体を十分感じ取ることができる。

| | コメント (0)

岡崎久彦 『繁栄と衰退と』 (文春文庫)

独立戦争から名誉革命までおよそ100年余りのオランダ史。

80年代の日本・アメリカ・ソ連を、それぞれ当時のオランダ・イギリス・フランスに例えるという著者の問題意識が興味深い。

そういうのは抜きにしても、類書が少ないオランダ史なんていう分野で、稀に見る面白い通史に仕上がっていて、非常に貴重。

読みやすいし、確実に世界史読書ラインナップに加えるべき良書。

| | コメント (0)

井上靖 『蒼き狼』 (新潮文庫)

チンギス・ハンを対象にした、かなり著名な歴史小説。

大岡昇平に絡まれたり、批判もいろいろあったようだが、素人は別に気にしなくていいでしょう。

『元朝秘史』に基づいて流暢に記された文章で、チンギス・ハン一代の事績についてかなり詳細に知ることができる。

今年はモンゴル帝国建国800年ということで、日経新聞に堺屋太一がチンギス・ハンを主人公にした小説を連載したり、他にも何点か関連書が出ているようだが、初心者はとりあえずこの一冊を読んでおけばいいんじゃないでしょうか。

(なおモンゴル史関係で著名な研究者に杉山正明氏がいる。モンゴルをはじめとする遊牧民に染み付いた「野蛮」「未開」「破壊勢力」のイメージを強く否定し、定住農耕民中心史観や西欧中心史観を強く排撃する人なのだが、どうも定説を攻撃するときのエキセントリックさについて行けず、著作を途中で放り出してしまったことがある。よってこのブログで紹介することは無いと思うが、一般向けにわかりやすい著作を多数出している方なので、書店や図書館で一度手にとってみることをお勧めします)

| | コメント (0)

高坂正堯 『世界地図の中で考える』 (新潮社)

妙な言い方だが、高坂氏の著作は世界史愛好者にとっては「栄養価」が高い。

国際政治学関係の本書も、凡庸な通史的書物よりも多くのことを歴史について教えてくれる。

細かな知識より歴史への全般的な考え方を吸収すべき本。

| | コメント (0)

高坂正堯 『文明が衰亡するとき』 (新潮社)

古代ローマ、ヴェネツィア、現代アメリカを題材に取った史的エッセイ。

相変わらず平易な表現でありながら、含蓄のある叙述。

特に冒頭のローマ帝国の衰亡を扱った章は貴重。

本書の知識は何でも吸収するつもりで熟読玩味すべし。

| | コメント (0)

塩野七生 『海の都の物語 上・下』 (中公文庫)

『ローマ人の物語』の刊行以前、塩野氏の代表作と見なされていたヴェネツィア共和国史。

最初「ヴェネツィア史ねえ・・・・もうひとつぱっとしないテーマだなあ」とあまり読書欲が湧かなかったが、上巻末尾にある高坂正堯氏の解説に釣られて読んでみた。

読後、イタリアの数ある都市国家の中で、ヴェネツィアが異色で別格の存在だということがわかった。

ローマやフィレンツェのような華々しさは無いが、怜悧な現実主義に基づく内政と外交を展開することによって、イタリアの都市国家の中で最もよくその独立性を保ったことが、読みやすい文章で叙述されている。

イタリア史入門書としても非常に優れている。

ちなみに中公文庫としては品切。版権が『ローマ人~』の版元の新潮社に移動したらしく、今は新潮社刊の単行本として新刊が入手できる。ただし高坂氏の解説は無い。

| | コメント (0)

宮崎市定 『史記を語る』 (岩波文庫)

元は岩波新書だが、それが堂々古典的著作として岩波文庫入り。さすが宮崎御大。

史記の目次に沿っての内容紹介と著者自身の学説のわかりやすい解説が並ぶ。

ざっと読むことで、中国古代史のおさらいが出来て便利。

| | コメント (0)

アンリ・トロワイヤ 『女帝エカテリーナ』 (中公文庫)

中公文庫には同著者のロシア皇帝伝記シリーズとして、『イヴァン雷帝』『大帝ピョートル』『アレクサンドル一世』が収められているが、そのうち特に前二著では陰惨な記述が多く、ロシアの“野蛮性”“後進性”がやたら強調され過ぎているような気がして、あまり良いとは思わなかった。

そういうことが気にならない人なら、順番に読むとロシア史の基礎ができて便利である。

さて、この作品では亡命ロシア人たる著者のロシアへの「偏見」はあまり感じられず、偉大な啓蒙専制君主エカチェリーナ2世の面白い伝記として純粋に楽しめる。

小領主の娘としての生誕から、ロシア皇太子との結婚、クーデタを経ての即位、ピョートル1世の事業を受け継いだ治世、プガチョフの乱の鎮圧、最晩年のフランス革命への対応などが興味深く綴られている。

ちょっと読みにくい部分もあるが、通読する価値は十分あり。

| | コメント (0)

阿刀田高 『新約聖書を知っていますか』 (新潮文庫)

キリスト教の使徒のうち、教科書に載ってるペテロとパウロ、両者の区別もつかなかった人(含自分)はまずこれを読みましょう。

一般常識として最低限知っておくべきキリスト教の知識が、これ以上無いほど平易に記述されている。

世界史関係の本を読む上でも、これくらいのことは頭に入ってないと困る。

著者が変な欲を出さず、本当に白紙の状態の読者に最低限のことだけを伝えようと徹しているところが大変宜しい。

| | コメント (0)

宮崎市定 『アジア史論』 (中央公論社)

主にかつて刊行された「世界の名著」シリーズを再版したものが多い、新書版の中公クラシックスの中の一冊。

それら文字通りの古典に交じって、これは宮崎氏の著作から、巨視的な概観的論文を集めたアンソロジー。

岩波書店刊の全集でしか手に入りづらかった論文が収録されていておいしい。

収録作のうちでは『東洋的近世』が中心だが、その他の論文もコンパクトでありながら、密度が高く有益。

素人が御大の世界史観を知るには、前述の『アジア史概説』より、こちらを勧める。

| | コメント (0)

宮崎市定 『アジア史概説』 (中公文庫)

宮崎氏の時代区分論を全アジア史にわたって展開した本。

イスラム時代という(宮崎氏の定義による)近世にいち早く達した西アジアの他地域に対する先進性が説かれる。

また、大幅に遅れて近世的発展に達したヨーロッパが極めて短い時間のうちにそれを完成させ、産業革命を中核とする全く新しい近代的段階に達し、アジアへ勢力を拡張する様を描く。

叙述はダイナミックで相変わらず面白いのだが、あまりに対象範囲が広すぎて、所々教科書的な事実整理の記述が続き、御大の著作には珍しく冗長に思える部分がある。

とは言え、これだけの力作を読まないのも惜しい。

少し気合を入れれば、初心者でも通読は難しくないので、買ってみましょう。

| | コメント (0)

司馬遼太郎 『韃靼疾風録 上・下』 (中公文庫)

著者のもう一つの中国歴史小説。こちらは17世紀の明・清交替期を描いた作品。

本書でも合間に挟まれる歴史余話が非常に面白い。

ストーリーを楽しみながら、著者の含蓄ある歴史観を吸収できる。

自分は『竜馬がゆく』も『翔ぶが如く』も『菜の花の沖』も『国盗り物語』も『関ヶ原』も、その他著者の代表作と見做されるものを全然読んでないひどい読者なわけだが、本書のようなレベルで日本史の各時代を語ってくれているのなら、「国民作家」として広範な読者を得ているのも十分理解できる気がする。

ただ世界史好きの読者からすれば、あと少し中国史や朝鮮史関連のまとまった著作があればと思うのは望み過ぎか。

| | コメント (0)

司馬遼太郎 『項羽と劉邦 上・中・下』 (新潮文庫)

言わずと知れた国民作家の手に成る中国歴史小説。

この作者の膨大な著作のうち世界史関連のものだけに関心があるという、極めて偏った変わり者の読者である自分にとって、これは本当の最高傑作。

人物造詣の巧みさ、的確さは「ああ、きっと史実でもこういう感じだったんだろうなあ」との思いを抱かせる。

ストーリーの途中で時おり挿まれる著者自身の感想、歴史観にも深く頷かされる。(儒教的価値観を持つ人物に異様に点が辛いのをやや別にして)

これだけ読みやすく、面白い歴史小説を措いておくことはない。初心者は即買いましょう。

| | コメント (0)

ポール・ケネディ 『大国の興亡 上・下』 (草思社)

1980年代末期、冷戦が終わりかけ、バブル経済絶頂期「日本脅威論」が盛んだった頃に出版され日米でベストセラーになった近代以降の世界の軍事・経済史。

「ある時代の覇権国が国力以上の介入を行う“手の広げすぎ”で衰退し、その間隙を突いて挑戦国が次の覇権国に躍り出る」というテーゼを説いている。

しかし本書の価値は、著者の一般的理論ではなく、解説で高坂正堯氏が言うように、細々とした史実の巧みな描写や、よく練られた統計やデータにあると思われる。

16世紀以後の主要国家の経済力と軍事力の推移、覇権闘争の過程がよく整理された形で叙述されている。

高校世界史の近現代政治史分野の知識を広げるのにちょうどいいテキスト。

| | コメント (0)

南川高志 『ローマ五賢帝』 (講談社現代新書)

「養子相続制によって賢帝が続いたローマ帝国全盛期」というイメージのある時代の統治の実状に迫った本。

著者自身の研究や標準的学説を十分に咀嚼し、一般読者向けにわかりやすく書いてくれているところが大変宜しい。

皇帝やその周辺の有力者の経歴を碑文などを手がかりに細かく解読していく方法で、まるで謎解きのように、当時の政治情勢を描き出す叙述はお見事。

世界史関係の新書版は結構な数があるが、本書のように面白くて本当に読むに値する本はかなり少ない。

| | コメント (0)

森谷公俊 『王妃オリュンピアス』 (ちくま新書)

タイトル見て、「誰だ、それ?」と思われるだろうが、アレクサンドロス大王の母である。

あまり表舞台に立たなかった人物の視点から見たアレクサンドロスの伝記なわけだが、これは疑いもなく傑作である。

当時のギリシア・マケドニアの情勢、大王の東征の事績、大王死後の後継者戦争の過程が実にわかりやすく書かれている。

アレクサンドロス関係の啓蒙書では一番いいんではないだろうか。

ところが、この傑作も品切状態。ネット書店であれば、即買いましょう。

(なお同じ著者で講談社から『アレクサンドロス大王』が出ているが、こちらは細々した戦史の考察や一次資料の信憑性比較検討などが多く、標準的な伝記とは言い難く、初心者向きではない。)

| | コメント (0)

猪木正道、佐瀬昌盛 『現代の世界 (世界の歴史25)』 (講談社)

何冊か第二次大戦後の国際政治史を紹介しているが、これは講談社から70年代後半に出ていた世界史全集の最終巻。

オーストリア中立化、ユーロ・コミュニズム、ポルトガル自由化など比較的マイナーな史実についても割りと詳しい記述があって便利。

巻末にある、簡単なコメント付きの参考文献リストも有益。

| | コメント (0)

岡崎久彦 『隣の国で考えたこと』 (中公文庫)

著者が70年代末期、在韓大使館駐在後に書いた韓国入門書。

冒頭の日韓関係の概論を読んで、「あの岡崎久彦が“自虐史観”を説いている!!」と驚くかもしれない。

といっても本書での著者の立場は「日清・日露の戦いは必然だったが、その後当時としてはいかに非常識な選択であっても韓国の独立を保全する政策を取ったほうが、極めて長期的な視野に立てば、韓国のみならず日本にとっても良かったのではないか」というもの。

半ば惰性の妄想じみた「反日」と身もふたも無い「嫌韓」が衝突する今日、朴政権から80年代中盤までの日韓の保守派同士の連携を「癒着」と片付けていいものかと思う。

日本側は少なくとも植民地統治の全面肯定はしなかったし、韓国側も「北」とその背後の共産国という共通の脅威に備えるため現在より真摯に日本と向き合っていたと思う。

それはともかくとして・・・・・。

日韓関係の概論から始まり、言語・民族と近似性、新羅・高麗・李朝史の簡略なおさらいに至る非常にオーソドックスでわかりやすい入門書。

全くの素人が韓国史を知るには、普通の通史的書物を読むより、こちらを先にした方が良いかも。

随所に現れる著者自身の歴史に対する姿勢や考えも興味深い。

残念ながらこれも新刊書店では手に入れることができない。

本書も含め昔の中公文庫のラインナップは世界史好きにはため息の出る素晴らしさ。

これからも品切の中公文庫を紹介することがかなりあると思うが、何とか少しでも復刊してもらえないでしょうか。

| | コメント (0)

ゴーロ・マン 『近代ドイツ史 1・2』 (みすず書房)

フランス革命からアデナウアー時代までのドイツ史。二段組で分厚い2冊。しかし全く退屈しない。

政治史を中心にした標準的通史だが、史実の取捨選択、主要人物の個性描写、社会・精神の目に見えない変化の巧みな把握、それらを一貫した物語として組み立てていく技量、何を取っても素晴らしい。

特筆すべきはヘーゲル、ハイネ、マルクス、ショーペンハウエル、ニーチェなどの思想家、文化人を扱った章。難しい概念など何一つ使わないにも関わらず、彼らの個性、思想の特色について明確なイメージを持つことができる。

最初読んだときは、ビスマルクとプロイセン的伝統についての評価が厳しすぎるのではないかと感じたが、再読してそれがありきたりのリベラル的立場からのものではないとわかった。

著者の立場は懐疑的な中道自由主義者とでもいうべきもので、偏狭な思想的立場から史実を裁断するようなものではない。ビスマルクやプロイセン・ユンカーについても評価すべき点は正当に認めている。

芸術作品とも言うべき歴史叙述の傑作で、読み終えた後の充実感は極めて大きい。

| | コメント (0)

宮崎市定 『科挙』 (中公文庫)

制度史というと面倒だなあと思ってしまうが、これだけメジャーな制度について宮崎御大が書かれたものなら例外。

中国において極めて重要な役割を果たした試験制度について、面白いエピソードを交えながら、概略をわかりやすく説明してくれている。

素人は大体ここに書かれてることくらいわかってれば十分じゃないでしょうか。

| | コメント (0)

ジョージ・ケナン 『レーニン・スターリンと西方世界』 (未来社)

二月革命から第二次大戦に至るまでのソヴィエト外交史。

歴史の正確で細かな経緯を記述し、それによって一般に広まっている俗説や誤ったイメージを訂正し、最後に著者自身の見解を押し付けがましくない形で述べるという歴史叙述のお手本のような本。

レーニンの“平和に関する布告”による和平提案の評価、西側諸国の干渉戦争の目的、安定期のソヴィエト政権に対して取るべきだった態度、第二次大戦の同盟国としてのソ連の評価など、著者独特の見解は非常に興味深い。

全くの初心者にとっては通読するのは少し厳しいかもしれないが、挑戦する価値は十分にある良書。

| | コメント (0)

村川堅太郎編 『プルタルコス英雄伝 上・中・下』 (ちくま学芸文庫)

ギリシア・ローマにまたがる伝記集なので、「古典古代」カテゴリに入れる。

(以上7月1日に訂正。複数のカテゴリ指定ができたので、「ギリシア」と「ローマ」の双方に入れる)

ヘロドトス、トゥキュディデスと共に高校世界史でもメジャーな古典。

岩波文庫に河野与一の全訳があったが、到底読みきれるものではない。素人はこの3巻本通読で十分。

アテネの伝説上の建設者テセウスやスパルタ衰退期の王アギスとクレオメネスなど、馴染みの無い人物の章はちょっと辛い部分もあるが、後はソロン、テミストクレスからカエサル、アントニウスまで有名どころが揃っている。

最初はあまり細かなところを覚えようとせず、豊富な逸話を楽しむくらいの気持ちで、どんどん読み進めていけばいいと思う。

まず一度通読すること。こういう古典的著作を読みきったこと自体が素人には自信になるので。

| | コメント (0)

セバスティアン・ハフナー 『ドイツ帝国の興亡』 (平凡社)

『ヒトラーとは何か』と同じく本書でも、この著者の歴史解釈の鋭さと面白さというのは一種独特のものがある。

ビスマルクによるドイツ統一から東西ドイツ共存までを扱う通史だが、読み終えた後、著者の歴史観に深く説得させられて充実感を味わえる。

それと初心者にとっては短いのも何より。

| | コメント (0)

猪木正道 『冷戦と共存 (大世界史25)』 (文芸春秋)

「大世界史」シリーズのうちの一巻。著者は高坂正堯氏の師匠にあたる人。90歳を過ぎて未だご存命。

出版は40年近く前だが、現在でも読むに値する本。

第二次世界大戦後から60年代末までの国際政治史として非常に良くまとまっている。

キューバ危機の部分の迫真の記述には思わず引き込まれる。

文革の最中の時期ではあるが、非毛沢東化が起こるのは間違いなしと断言。

メリハリのある明快な文章で読みやすい。初学者にも勧められる。

高坂氏の『現代の国際政治』と読み比べるのも面白い。

| | コメント (0)

神谷不二 『朝鮮戦争』 (中公文庫)

この戦争についての標準的な概説として、ちょっと昔の国際政治の本では、実に高い確率で参考文献として掲げられている。

短く手ごろで、できるだけ客観的な記述で戦争の過程を辿ろうとしている。

新書版として1960年代半ばに出た後、文庫版となり、今日まで40年以上読み継がれていることが、本書の価値を証明している。

| | コメント (0)

辻邦生 『背教者ユリアヌス 上・中・下』 (中公文庫)

教科書で「コンスタンティヌス帝のキリスト教公認後、異教復興を企てた」と一行だけの説明で名前の出る主人公。

どんな暴君なのかと思っていたが、ギボン『ローマ帝国衰亡史』の該当箇所では高潔で有徳な名君として(恐らく最も好意的に)描写されていて驚いた。

そのことに強い印象を受けていたとき、書店でこれを見つけて読んでみた。

コンスタンティヌス大帝の甥として生まれながら、父を謀殺され、虜囚のような待遇を受けつつ、ついに帝位に登りつめたものの、まもなく死を迎える浮き沈みの激しい波乱万丈の生涯が詳細に描かれていた。

読み終わったときには主人公が最も好きな歴史上の人物となっていた。

その後読み返すと本書ではユリアヌスをあまりにも理想化しすぎているような気がしたが、それでも日本語で書かれた最も魅力的な西洋歴史小説の一つであることは間違いないと思う。

厚い三巻本だが、別に予備知識も要らないし、初心者でも読めるので、本書の世界にのめり込み、後期ローマ帝国の雰囲気に浸るのもいいんではないでしょうか。

| | コメント (0)

セバスチャン・ハフナー 『ヒトラーとは何か』 (草思社)

ナチス、ヒトラー関連本は数え切れないほどあるが、まず読むならこれ。

この薄さでこれだけ独創的見解が随所に出てくる本も珍しいと思う。

本書の核心的主張は「捕虜虐待、偶発的民間人殺害、非軍事目標への爆撃などの“通常の戦争犯罪”と計画的民族皆殺しというヒトラーの真の犯罪を区別せよ」ということだろうが、その他にも意外だが納得させられる著者の見解が多く見られる。

読む労力に比して、得られる面白さのコストパフォーマンスは非常に高い。

| | コメント (0)

ジョージ・ケナン 『アメリカ外交50年』 (岩波現代文庫)

著者は第二次世界大戦後、対ソ封じ込め政策の立案にあたった著名な外交官だが、高校世界史では名前の出る人ではなく、高坂氏の『国際政治』ではじめて知る。

(7月8日追記 最近の教科書では載ってるものもあるようです。私が高校生だった十年以上前の教科書ではケナンもキッシンジャーも影も形も無かったのだが。)

そこで浪人中たまたま書店で見かけた本書を買ったのだが、大当たり。

米西戦争から第二次世界大戦までのアメリカ外交を概観した前半部分は高校生でも読める平易な記述ながら、極めて示唆に富む。

門戸開放政策など当時の国際関係の現実から乖離した理想主義が米国の国益を損ない、日米対立を深刻化させたと批判する。

その他第一次世界大戦で米国が取るべきであった態度など興味深くかつ説得的。

封じ込め政策の理論的基礎となった有名な「X論文」を含む、後半の外交論文はやや読みにくいが、これも有益。

国際政治学、国際関係論でも初学者必読の文献だが、普通の世界史好きの読者がアメリカ史入門書として読む上でも最高の本だと思う。

| | コメント (0)

モンタネッリ、ジェルヴァーゾ共著 『ルネサンスの歴史 上・下』 (中公文庫)

中世末期から16世紀までのイタリア史で、これは『ローマの歴史』ほどのおふざけはなく、手堅い内容。

だが無味乾燥な教科書的記述ではなく、生き生きとした人物描写を中心にした面白い歴史叙述であることは同様。

下巻では同時代のヨーロッパ各国の歴史についてもかなり触れられている。特にルターの人物描写はかなり印象的。

訳者の藤沢氏によるあとがきによると、モンタネッリは古代ギリシアから現代イタリアに至るまでのシリーズを書いてるそうだが、翻訳されてるのはローマ史とこれだけ。

どこかの出版社が出してくれないだろうか。

| | コメント (0)

藤沢道郎 『物語イタリアの歴史』 (中公新書)

かなりの数が出ている中公新書の『物語~の歴史』シリーズだが、これが最高傑作。

中にはかなりマイナーな人物を含む10人の伝記によって、ローマ帝国崩壊からイタリア王国統一までの通史を生き生きと語ることに成功している。

この人はモンタネッリの訳者。一般向けにわかりやすい歴史物語を提供することの意義を強調していたありがたい人。

もう亡くなられたが、心よりご冥福をお祈りします。

| | コメント (0)

林健太郎 『二つの大戦の谷間 (大世界史22)』 (文芸春秋)

1960年代後半に文芸春秋社が出していた「大世界史」シリーズの中の一巻。(前の記事の『ヒトラーの時代』も同シリーズ。本書も『両大戦間の世界』というタイトルで講談社学術文庫に入っていた。)

同著者の『ワイマル共和国』の叙述を欧州・米・ソにまで広げた感じの本だが、同じように実にわかりやすく、面白い概説に仕上がっている。

高校レベルの読者にとっては最高の入門書と言っていいと思う。

最後の2章では当時の文化人の政治との関わりを述べているが、これも普通の高校世界史では味わえない興味深さを持っている。

| | コメント (0)

野田宣雄 『ヒトラーの時代 上・下』 (講談社学術文庫)

似たような概説書は山ほどあるが、本書の良いところは第二次大戦に至る各国の意図と外交交渉が実にわかりやすく的確に叙述されているところ。

内政事情もコンパクトにまとめられており、この種の本では白眉。

品切状態ですが、新刊として手に入るようにしてくれませんか、講談社さん。

| | コメント (0)

中嶋嶺雄 『中国  歴史・社会・国際関係』 (中公新書)

著名な中国研究者による入門書。

「穏歩」と「急進」のサイクルという観点からの時代区分で、中華人民共和国成立後の政治の流れがよく理解できる。

高校生・大学生向けとしては最良の中国現代史入門書と思われる。

| | コメント (0)

エドワード・ギボン 『ローマ帝国衰亡史 1~5』 (ちくま学芸文庫)

高坂先生の『文明が衰亡するとき』でこれが有名な古典的著作であることを知る。

まもなく大学生協の書店で現物を見る。

「全10巻かあ・・・・。長いなあ。1巻だけでも結構分厚いし。まあ挫折してもいいから、試しに第一巻だけ買ってみるか」と読み始める。

これが滅法面白い。五賢帝の後、教科書では軍人皇帝時代とだけで片付けられる斜陽のローマ帝国の物語が極めて巧みに語られていく。

初心者はとりあえず西ローマ滅亡の5巻末までを読むことを目標にすればいい。

後半にもイスラム勃興始め興味深い部分もあるが、無理は避ける。

できれば巻末の皇帝一覧を参考に、西ローマの帝位順くらいは頭に入れられるようにしたい。

| | コメント (0)

宮崎市定 『雍正帝』 (中公文庫)

終戦後間もない頃、岩波新書の一冊として出版され、名著の誉れが高かったが、ずっと入手困難だった本。

今上陛下も若い頃愛読されていたとか。

幸いにして10年ほど前中公文庫として復刊。即購入。

一読したときどうも読みにくさを感じ、世評の高さの割りに感銘を受けなかったが、どう考えてもこちらの問題であろう。

ある意味康熙、乾隆を上まわる名君についての貴重な伝記であることに間違いない。

| | コメント (0)

宮崎市定 『隋の煬帝』 (中公文庫)

宮崎氏の一般向け著作はどれも全く外れ無し。

これもわかりやすく面白い。

『大唐帝国』の一部で扱っている時代をさらに詳細に記述したものだが、当時の時代背景から煬帝の個人的肖像まで実に生き生きと描写されている。

| | コメント (0)

モンタネッリ 『ローマの歴史』 (中公文庫)

『ローマ人の物語』はあまりに長大だという時はこれ。

皮肉とユーモア満載の文体で、一冊でローマ史が通覧できる。

中にはマユツバものの話もあるが、教科書で単なる名前として載っている人々が繰り広げる悲喜劇を楽しみながらローマ史の概略が頭に入るんだから貴重な本。

共和政時代は手厚く帝政時代はやや簡略。塩野ローマ史は逆だからちょうどいいかも。

| | コメント (0)

塩野七生 『ローマ人の物語』 (新潮社)

取り上げるのに激しくいまさら感が漂う有名シリーズ。

いろいろ言われてるが、ローマ史のような超メジャーな分野で、これだけのレベルの啓蒙書があるということはやはり有難い。

全15巻と極めて長大だが、難解な部分も無く、通読は思うほど困難ではないと思う。

単行本ではなく、文庫本の刊行を待って、何巻かに分けて読むのも手。

著者の名を知ったのは、高坂正堯氏の『文明が衰亡するとき』(新潮社)の中で参考文献として挙げられていた『海の都の物語』の著者として。

ヴェネツィア史を扱ったその本に興味がわかなかったとき、町の小さな書店で『ローマ人』第一巻を見つけ、あまりの面白さに驚く。

著作の中には高校世界史からするとマイナー分野に入り、あまり触手が動かないものもあるが、これはやはり外せない。

今年年末の完結が楽しみ。

| | コメント (0)

貝塚茂樹編 『世界の名著 司馬遷』 (中央公論社)

これも抄訳。

「史記列伝」も岩波文庫で全5巻の訳が出てるが、巻によって同内容の繰り返しや砂を噛むような地名・人名・官名の羅列など冗長に思える部分があり、通読はきついかも。

それでこれの出番となる。

一冊で誰もが知ってる古典的名著のキモは掴める。

しかし『ヘロドトス~』にも言えることだが、全訳はしんどいが、抄訳だと物足りない気がする。

本書でも省略された人物に興味が湧くことが多い。

やはりいつ通読するかわからなくても、全訳本は手元に置いた方がいいかも。

| | コメント (0)

« 2006年5月 | トップページ | 2006年7月 »