岡崎久彦 『陸奥宗光とその時代』 (PHP文庫)
この著者はとにかく毀誉褒貶が激しい。「親米保守」の代表格として左右両派から目の敵にされている。
しかしこの近代日本外交史シリーズではそれほどひどい「親米的偏向」は見られないと思う。
現在の政策について「対米追従」と言えばそうかもしれないが、著作を読むと決して「戦勝国の正義」に屈しているわけでもない。
というわけで、非常にまとまった入門書として当シリーズを勧めることにする。
第一巻のこれだが、前半は陸奥の生い立ちと維新前の社会状況、明治国家の内政の話が延々と続き、仕方が無いとは思うが、個人的には少々参った。
後半日清戦争の記述に入ると、俄然面白くなる。
史実がよく整理された叙述と著者の歴史的評価が絶妙によく合わさっている。
中学生でも読める入門書を目指しただけあって、表現は平易で難解な文章も無い。
良質の啓蒙書として通読しておく価値大。
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