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トゥーキュディデース 『戦史 上・中・下』 (岩波文庫)

抄訳は中央公論・世界の名著『ヘロドトス・トゥキュディデス』で紹介済み。

だが人によっては古今東西すべての歴史書の中で最高の書と評価する本だけに、全訳を読むべきなのかなあと思っていた。

1966年初版ながらその後ずっと品切状態で、入手困難なことで有名であった本書が1998年ごろ記念復刊された。

喜び勇んで即購入し、読み始めたのだが、かなり苦労した。

何とか通読したものの、さほどの感銘も受けずただ字面を追っただけといった感じで、これだけの名著の良さを自分は感じられないのかとガックリきた。

そういう不完全燃焼のようなモヤモヤした気持ちを持ちながら、本自体手放してしまっていたのだが、昨年また復刊されたのを期にまた購入し、気合を入れて再読してみた。

そしてようやく本書の凄さがわかった。

これだけの名著だけにいろいろな読み方ができると思う。

政治史というものを確立した書であると共に、乗り越え不可能なその一つの完成形態として。

パワー・ポリティクスの真髄を教えてくれる国際政治学最古の古典として。

ペリクレスという教導者を失った後、党派争いと衆愚政の中で自滅していった、人類史上初の民主主義国家アテネの惨めな堕落ぶり。

ポリス間、個人間から寛容と信頼が消え失せ、最低限の自己安全への懸念から疑心暗鬼に陥り、邪悪な行為が平然と行われるようになる内戦の悲惨さ。

やはり最低一度は通読しておくべき書物と思われる。

面倒臭がらず地図を何度も見て、主要なポリスと島嶼名をしっかり把握しながら読み進むこと。

なお本書は未完である。訳者による補遺も特に無い。

ペロポネソス戦争終局までの歴史を知るには、プルタルコス『英雄伝』の「アルキビアデス伝」を読めば、概略はつかめる。

本書が中絶したところから続けて書かれたクセノフォン『ギリシア史』の翻訳が京都大学学術出版会の「西洋古典叢書」の中にあるが、まあ素人が読むのは相当厳しいだろう。(私は買ったものの、恥ずかしながら数ページで挫折した)

トゥキュディデス『戦史』の話に戻ると、この文庫版は昨年の復刊後また品切。同じ「西洋古典叢書」で全訳が出ており、これは手に入るようだが高いし厚い単行本で読みにくい。

こういう基本中の基本書が常時手に入らないのでは、岩波書店の名がすたるというもんじゃないでしょうか、文庫担当者様!!

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