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ユン・チアン ジョン・ハリディ 『マオ 誰も知らなかった毛沢東 上・下』 (講談社)

少し前に大いに話題になった毛沢東伝だが、ちょっと問題あり。

よく引用されるが、張作霖爆殺がソ連秘密機関の仕業だとか書かれると、どこまで信用していいものやら不安になる。

特に共産党の全国制覇までの前半部分は毛沢東の悪意で何でもかんでも説明しすぎではないか?

言うまでも無く、長征から反右派闘争まで二十年余りの期間、中共は無謬だったなんていう阿呆な与太は全く信じる気にならない。

延安をはじめとする「解放区」の悲惨な実態はその通りだと思うし、整風運動が粛清の恐怖を背景にした洗脳運動だったこと、日本軍や国民党だけでなく共産党も阿片販売を資金源にしていたのも事実だろう。

こういう史実を暴いて毛を強く批判することは当然だと思うのだが、それと毛の「悪魔化」はやはり違うのではないか。

(著者のユン・チアンはじめ毛の統治下で甚大な被害と苦しみを受けた人にとっては、それも実感なのだろうが)

後半、毛が全能の独裁者になった後はこういう違和感はやや薄れる。

しかし内容的には以前記事にした『毛沢東の私生活』とかなり重複してしまう。

建国後の毛は失政の連続なので、離反・失脚した彭徳懐・劉少奇・鄧小平はやや理想化されるほど評価が高いが、周恩来の評価はガタ落ちである。まあこれはしょうがないか。

通して読んでみると面白いとは思うが、全般的評価に関してはちょっと留保せざるを得ない。

私は読了した後、処分してしまった。文庫化された場合また買い直すかどうか迷っている。

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古川薫 『軍神』 (角川書店)

司馬遼太郎の『坂の上の雲』および『殉死』において、乃木希典は近代的軍事指揮官として完全に不適格な人物であり、多くの将兵を不必要な死に追いやった愚将として描写されている。

その人間性に対しては多少の同情と賛嘆が記されてはいるが、以上二作の完成度と人気の中で、「乃木愚将論」は多くの人々の間に広まっていった。

それに対して強く反論し乃木を弁護したのが福田恒存であり、なかなか面白い文章なのだが、今は全集本以外で読むことは難しい。

そこで気軽に読めるこの伝記小説を買ってみた。

本書も乃木に対して大いに同情的であり、司馬の乃木観に異議を唱えている。

旅順攻防戦で膨大な数の戦死者を出した原因が乃木の個人的指揮能力の問題だとは私も思わない。また乃木の人間性は、たとえ今の時代から見ても強く心を動かされるところがあるし、どうしてもある種の感動を禁じえない。

個人的には読んでよかったと思わせる小説であった。

あと同じく乃木への同情的立場に立つ書物に福田和也の『乃木希典』(文芸春秋)がある。

こちらは文庫化されたときに読もうかなと思っている。

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セバスティアン・ハフナー 『裏切られたドイツ革命 ヒトラー前夜』 (平凡社)

ハフナーの本で翻訳があるものは、これまでにほとんど紹介済み。

それらの著作はどれも斬新で面白いものばかりである。

しかし本書は少し引っ掛かるところがある。

ドイツがその後辿った道を考えれば、1918年革命の「不徹底」を嘆きたくなる気持ちもわかるし、祖国の悲惨極まる破局を見た著者自身からすれば、「これ以前に何か思い切った行為が行われていれば、全く別の道があったはずだ」という思いに囚われるのもわかる。

またハフナーが好ましいと思う革命はあくまで社会民主主義に立脚するものであり、ボリシェヴィズムとロシア革命は決してドイツの規範にはなりえないと考えていることも明らかである。

しかし他の本の考察のように掛け値なしに面白いとは思わなかった。

ハフナーの著作でこれだけは図書館で借りて読んだ本で、買ってはいないのだが、たぶんこの先も買うことはないでしょう。

しかし一読の価値はある本だと思います。

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梅棹忠夫 『文明の生態史観』 (中公文庫)

中央集権的な専制帝国が興亡したユーラシア大陸中央部と、封建制度による権力分散が行われたユーラシア周辺部の西ヨーロッパおよび日本を対比し、後者のみが近代化への道を辿ることができたことを重視し、日欧間の共通性を強調する史的文明論。

難解な記述はほとんど無く読みやすい。

かなり古いが有名な本だし、一度は通読しておいたほうがいいかも。

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森本哲郎 『ある通商国家の興亡 カルタゴの遺書』 (PHP文庫)

ローマのライバル、カルタゴに重点を置いた本というのはあまり無いので、珍しさもあり買ってみた。

軍事に重きを置かず、文化的価値にも乏しかった経済中心主義の通商国家カルタゴが、ローマによって完膚なきまでに叩きのめされ、その痕跡すら留めないほど破壊された歴史を顧みて、バブル全盛期の日本に警鐘を鳴らすという意図は興味深い。

だが塩野ローマ史の『ハンニバル戦記』を熟読した上で、さらにこれを読む必要があるかというと少し迷ってしまう。

特段お勧めはしませんが、機会があればどうぞ。

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岡崎勝世 『聖書vs.世界史』 (講談社現代新書)

旧約聖書とそれに基づく伝承から導かれた中世ヨーロッパのキリスト教的世界史観が、年代的に極めて古い、古代エジプトおよび中国についての知識が普及してくることによって揺さぶられていく、その過程で様々な学者がいかに「辻褄合わせ」をしたかといったことを主題にした本。

あまり知られていない分野について、平易に説明してくれており、内容もなかなか面白い。

正統的な世界史知識を得る本ではなく、好事家的研究と言えばそうだが、最後まで読めばそれなりに役に立つと思います、はい。

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高坂正堯 『海洋国家日本の構想』 (中央公論社)

1965年に出た高坂氏はじめての著書。

当時の非武装中立論から外交・防衛の議論を建設的な方向に救い出そうとした「現実主義者の平和論」に始まり、核武装間もない頃の中国のへの対応策、イギリスに範を採った開かれた海洋国家としての日本を提唱した表題作、と内容は盛り沢山。

40年以上前の本とあって、今読むとさすがに現在とのズレを感じるところもあるが、しかしそれでも歴史と外交について、多くの示唆を与えてくれる本である。

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『林健太郎著作集 第三巻 ドイツの歴史と文化』 (山川出版社)

第一巻は抽象的議論の多い史学概論、第二巻は近代ドイツ史上の細かな問題に関する学術論文集、第四巻の収録作は『ワイマル共和国』と『両大戦間の世界』で両方ともすでに持っている、ということでこの第三巻だけ読みました。

ドイツ史のごく簡略な概説から、普墺・普仏戦争の戦史、『ドイツ市民精神』と題されたフランス革命後の政治思想史、20世紀の偉大な歴史家マイネッケの生涯と作品の紹介、あとは軽めの歴史読物がいくつかあり。

気軽に読めるものがほとんどで、どれも結構面白い。

もうちょっと値段が安ければいいんですけどね。

でも私としてはかなりお勧めです。

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ジョージ・ケナン 『二十世紀を生きて』 (同文書院インターナショナル)

晩年のケナンが自身の政治的哲学とアメリカ社会への視線を披露した本。

民主主義、平等主義、技術革新、市場主義、理想主義的外交などアメリカ文明を特徴付ける様々な要因に対して深い懐疑を示している。

格調高く極めて意義深い文章ながら、晦渋なところは全く無い。

著者の人格と識見が生み出した、政治哲学と社会批評の素晴らしい傑作。

私の念頭にあるのは、スターリンとヒトラー政権の最盛期の暴虐が現出したような、二十世紀の全体主義の現象である。両政権は、西欧文明の歴史上の他のすべての種類の政府と、いくつかの本質的な面で違っていた。極めて権威主義的または専制的な政府が、その法律を犯したり、その権威を危うくしたり逆らったりしたと認めた者を過酷、残酷に扱った例は歴史上、数多い。これら二つの独裁制が他のすべての専制と違うのは、その残虐の規模そのもの(他の場合は数百、またはせいぜい数千人だったが、両者は何百万人に被害を与えた)だけでなく、さらに重要なのは、その残虐の犠牲者の圧倒的大多数が、有罪でなく無実の人々だったことだ。何百万人もが、何をしたかでなく、何であったか、またはそう思われたか、さらには、実際思ったり言ったりしたのではなく、思っていると疑われるという、自分の責任でないことのために、迫害、断罪されたのだ。・・・・・(私が「全体主義」という用語を使う時、念頭に置くのはこの性格の政権だけだ。これら両政権と、独裁的権威主義の普通の諸形態ともいうべきものとの間には大きな違いがある。

・・・すべての政府システムを縦断し、他のすべてに勝る意義を持つ基本的な相違がある。それは「民主的」と「非民主的」な政府の違いと説明すれば最もわかりやすいだろうし、米国では特にそうだ。私個人としては、この関連で「民主的」という用語を使うのが嫌いだ。この用語は、そもそも米国の建国の父の多くが、建設中のシステムを説明するのに使おうとはしなかったろう。当時ですら「民主主義」という言葉は相当多くの意味になり、代表制政府の制度の強力な支持者ですら、軽蔑的に用いることがあった。さらに近年になると広く乱用されて、かってどんな意味があったにせよ、その大半が失われるに至った。

私は自分の見聞から、しかもその多くは社会主義国に住んだ経験からいうのだが、少数の者がよい暮らしをするのを阻むことができれば、他の者の暮らしはすべてよくなるという想定ほど、現実の経験によって広く徹底的に論破されてきた想定を知らない。

平等主義の逆は、少なくとも多くの人々の考えでは「エリート主義」であろう。この言葉が米国の公の論調で、実に多くの場合必ず軽蔑的な意味に用いられることに私は驚きを告白せねばならない。・・・・オックスフォード英語辞典には「(社会、または何らかの団体ないし階層の)選り抜きの部分または精華」とあり、この方が本当の意味に近い。「エリート」という言葉はこの意味に使うべきだと私は思う。

そこで伺うが、このどこが悪いか?込められた意味は、きざな夜郎自大や不当な特権付与ではなく、ただ一般大衆の中から、社会の一定の有用な機能を果たす資格のある者を採りたて、それにともなう責任を負わせるだけのことだ。この種の選抜があり得ることを否定する者は、我が国が基礎を置くところの選挙の原則そのものに楯突くことになる。

人間は結局のところ、平等に生まれるのだろうし、法の前には平等でなければならない。だが、人間の平等は大体そこで終わりだ。・・・・肝心の問題は、エリートなるものが存在しなければならぬか否かではない。問題は当のエリートの質であり、また特に、エリートを選抜する基準と制度である。特権的エリート、ましてや不当な特権を持ったエリートである必要はない。だが忘れてはならないのは、いかに不完全に遂行されているとはいえ、特別の責任には特別の手段(時には特別の便宜や権威の必要条件すら)が必要になることが多い、ということだ。また上級の地位には、少なくとも外見上の尊敬を要求する権利がある。・・・・

こうした理由から、確立した権威への尊敬を否定し、それを打倒しようとすることによって、自分の自尊心の背伸びをしようとする者に私は我慢がならない。たとえば自分の卒業式に変な下らない衣装で出てきて、してやったりと思い込む学生。行為の人物の個人的な弱点を笑いものにして、自分は賢く優秀なところを見せたと思うジャーナリスト。訪米した指導者のリムジンに卵を投げる者ども、などだ。他人を尊敬することができない者は、普通、自分をも尊敬することができない。だれも尊敬に値しないというのは、自分も尊敬に値しないと、知らず知らず告白することだ。

「エリート主義」への非難(その一部から私も免れなかったが)が私自身の心中に呼び起こした考えは、以上のようなものである。エリートは是非とも持とう。他人に尽くすエリート、良心、責任感、自制心にすぐれ、自分を顧みず他人のためになろうと心に決めたエリートを。だがこのエリートを持ったからには、理想に遠く及ばずとも、これを尊敬し、そんなものはなくてもよいというふりはしないことにしよう。他人は私のエリート主義傾向をうんぬんするが、かくて私は懲りず、臆せず、それを追及するだけだ。

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松本重治 責任編集 『世界の歴史 16 現代 人類の岐路』 (中公文庫)

とうとう最終巻です。

戦後世界史なのですが、どうも良くないですねえ。

執筆者が多いせいか、何かまとまりに欠けた雑然たる印象。

一貫した叙述方針が感じられず、時事的な感想文がただ並べてあるだけと言うか。

これを「国際関係・外交」カテゴリにある猪木正道『冷戦と共存』やハレー『歴史としての冷戦』と同じように戦後国際政治史として推薦できるかというと大いに躊躇せざるを得ない。

せっかくここまで来たんですから、これだけ読まないのも何なんで最後まで読み通しましたけどね。

このシリーズを読破するつもりならどうぞ。読むに耐えないとまでは言いませんので。

ただし面白そうな巻だけ読もうという方には特には勧めません。

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黒岩徹 『イギリス現代政治の軌跡 指導者たちの現代史』 (丸善)

前日、日本の歴代首相について知るため『総理の値打ち』を挙げましたが、今日は戦後イギリスの首相に関する書物です。

第二次大戦後の米・ソ・英・仏・独(西独)の政治指導者の順序と在任年度は、やはり基礎知識として暗記しておくべきだと思われる。(短命首相の連続である第四共和政下のフランスを除く。同じ理由でイタリアは全時期除外。記憶に値する首相はデ・ガスペリだけだし。国際政治上の重みからすると残念ながら日本も同様だがこれは自国なので憶えましょう。)

私の場合米ソ仏独はほぼ確実に憶えているが、恥ずかしながらイギリスが一部危ない。

そこでアトリーからブレアまでの簡略な列伝である本書の出番となる。

はっきり言ってさして面白いものでもないが、短いページで基礎知識をうまく配しているので良しとしましょう。

新書一冊で一通りの史実が頭に入るので便利じゃないでしょうか。

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福田和也 『総理の値打ち』 (文春文庫)

子供の頃、「漫画版日本の歴史」といった本を熟読していたので、小学校高学年のときに大正時代と戦後昭和期の日本の歴代首相は暗記していた。(漫画の記述で詳しい所とそうでない所があり、明治時代と昭和前期は大雑把にしか憶えてなかった。)

さて大人になって歴代首相を順に言えるかというと正直怪しい。(もちろん名前を言われればどの時代かぐらいはすぐわかるが。)

自分の国の政治指導者に関してこれでは恥ずかしいので、本書でも手に取りますか。

福田氏の独断と偏見に基づいた歴代総理の採点表です。

これを見ながら、「やはり原敬というのは保守的観点から見ても偉かったんだなあ」とか「加藤高明は点高すぎじゃないか」とか「中曽根がこんなに低いのか」とかあれこれ自分で論評してみるのが楽しい。

近代日本政治史のおさらいが簡単に出来る便利な本。買っても損はありません。

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村瀬興雄 責任編集 『世界の歴史 15 ファシズムと第二次大戦』 (中公文庫)

近代史に入ってから悪口ばかり言ってきた気がするこのシリーズ、「どうせこの巻も」と斜に構えて読み始めたら、これが予想外に良かった。

岩間徹氏によるスターリン時代のソ連史は出色の出来。ソ連体制は帝政ロシアの専制体制と異なって精神的にも全能の支配権を揮う前代未聞の無制限の独裁だとか、マルクス主義者の言う資本主義の害毒とは急激な工業化が原因であり、社会主義体制下での工業化では資本主義下以上の弊害が出ているなど、今読んでも全く違和感が無い。

終戦直後ならともかく、すでにスターリン批判も経て、共産主義の知的支配権はガタ落ちになっていた時期だから、特に異とするに足りないのかもしれないが、ごく真っ当な記述に感心させられる。

また衛藤瀋吉氏による東アジア史が安心して読めるものになっているのも前巻同様。前に衛藤氏の著作集の記事でも書いたが、この叙述を「自虐的」として怒る人がいるかもしれないが、私は衛藤氏の史観を信頼しているので、必ずしも同意できない記述でもさほどの不快感を持たず読み通せた。

さて以上の部分は非常に良好な出来なのだが、肝心の責任編集者である村瀬氏によるドイツ史の記述がやや頂けない。そもそもナチズムを「ドイツ保守主義の一系譜」と位置付ける村瀬氏の見方を私は根本的に疑っているので、読んでいてどうも面白くない。

内容的には玉石混交といった感じです。

とは言え近代以降の巻ではかなり良い。個人的には高得点です。

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伊藤潔 『台湾』 (中公新書)

新書版で手軽な台湾史入門書。

オーソドックスな年代順の章立てをまもっているので、読みやすい。

内容はかなり台湾独立派寄りか。

なおカテゴリを「中国」にしているのはこれ以上のカテゴリ乱立を防ぐためで他意はありませんのであしからず。

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西部邁 『思想の英雄たち』 (文芸春秋)

この人は大学時代以来、高坂正堯氏に次ぐくらいの程度で、その著作を読み込んだ人である。

時には大きな反発を感じながらも、その思索を無視することはできず、知らない内に影響を受けた面が大きいと思う。

それと私の読んだ限りの全ての著作家の中で、この人の文章は一番上手いと思う。

合わない人もいるだろうが、私は西部氏の正確・怜悧・端正な文体に非常に感心させられた。

著作の多い人だが、とりあえず『大衆への反逆』(PHP文庫)、『生まじめな戯れ』(筑摩書房)、『人間論』(日本文芸社)あたりを読めばよいと思う。

だが世界史関係のブログで紹介するような本はこの『思想の英雄たち』くらいか。

エドマンド・バークからマイケル・オークショットに至る西欧の保守思想家の列伝風紹介。

歴史家のブルクハルトやホイジンガも載せられており、オークショットやギュスターヴ・ル・ボンなどあまり馴染みのない思想家について記されているのも有り難い。

一つの良質な近代西欧思想史として通読する価値有り。

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江口朴郎 責任編集 『世界の歴史 14 第一次大戦後の世界』 (中公文庫)

この巻も13巻と同じですね。

興味深い歴史の見方や史実の捉え方を示してくれるわけでもなく、平凡な記述が続くだけといった感じです。

具体的で細かい史実の描写にやや面白みがあるかなといったところ。

東アジア史担当の衛藤瀋吉氏が執筆した部分だけやや例外ですかね。

軽く流してとりあえず最後まで読めばそれでいいでしょう。

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サイモン・シャーマ 『フランス革命の主役たち 上・中・下』 (中央公論社) 

フランス革命200周年を期に英米で出版されてかなりの好評を得た本らしい。

著者の革命への視線はかなり厳しい。

封建的諸特権の廃棄と自由な政治制度の創出などを革命の成果と見ることには懐疑的であり、突発的な暴力の連鎖によって事態が制御不能になっていく様を詳細に記述していく。

また1789年革命勃発当初の農村暴動による死者が1793年の恐怖政治の犠牲者より多いことを強調し、最初良きものとして始まった革命がジャコバン主義に「乗っ取られた」という見方も強く否定する。

暴力こそ、フランス革命の契機であり、推進力であり、その本質であったと断言する。

私自身はこういう革命観に全く異議が無い。

しかし最近の本らしく叙述方法としては政治文化を主とした社会史的記述が多く、読み通すのに非常に苦労した。

確か三巻合わせて1万円を超える本であり、もったいないので何とか最後まで読みきったが、私の頭と趣味性向からするとこの本は高級過ぎた。

良書だとは思いますが、内容はご自身の目でお確かめください。

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永田実 『マーシャル・プラン』 (中公新書)

アメリカ外交史上最も輝かしい成功例であり金字塔との評価もある、第二次大戦後の対欧州援助策の概説。

さほど難解な記述も無く読みやすい。

著者は日経新聞の人。初版が1990年なので、終章ではバブル絶頂期の日本が「日本版マーシャル・プラン」を実行していかに世界に貢献するかといった話になっている。

ああこういう時期もあったんだなあと感慨に耽ってしまいますね。

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中山治一 責任編集 『世界の歴史 13 帝国主義の時代』 (中公文庫)

ドイツ統一から第一次大戦直前までの概説。

可も無く不可も無くといった感じの叙述が淡々と続く。

基本的に帝国主義という政治現象を高度資本主義の発達による必然として経済的要因だけから説明するという視点なので、この時代の新たな見方を特に啓発されるということもなく、退屈と言えば退屈である。

具体的史実の記述としては、さほど面白くも無いが、特に酷くも無い。

まあさらっと読み通して次に行きましょう。

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E・H・カー 『危機の二十年』 (岩波文庫)

学問としての国際政治学を確立したと言われる名著。

以前から書名は知っていたのだが、古書店でもなかなか見つけられず読むことができなかった。

そうしているうちに岩波文庫に収録されたので、早速購入してみたのだが、どうも読みにくく良さを感じ取れなかった。

その後本書の翻訳が間違いだらけだと告発する文章を月刊文芸春秋で読む。

それを読んだ限りでは確かに問題だなあと思った記憶がある。

よってあまり再読する気にはなれない。

どこかから新訳が出るまで待ちます。

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ジェラール・ヴァルテル 『ネロ』 (みすず書房)

暴君の代名詞にもなったローマ皇帝に関する、かなり詳細な所にまで踏み込んだ伝記。

生き生きとした記述で、歴史小説のように面白く読める。

ただし、初学者はまず以前紹介した、秀村欣二『ネロ』(中公新書)か塩野ローマ史の『悪名高き皇帝たち』を読んでおいた方がいいと思う。

秀村氏によると本書は一部純然たるフィクションに近い部分もあるそうだが、素人としては面白いからいいんじゃないでしょうか。

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木戸蓊 『激動の東欧史』 (中公新書)

1989年に東欧共産圏が崩壊した翌年に出た戦後東欧史。

簡単に読めてそこそこの知識を得られるのでなかなか良い。

89年ごろというと私にとっては完全に同時代史で、テレビと新聞で東欧の政変をじっくり見た記憶がある。

本書の末尾部分をパラパラと見返すと懐かしいですね。

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井上幸治 責任編集 『世界の歴史 12 ブルジョワの世紀』 (中公文庫)

10巻を乗り越え、11巻で息抜きして、さあやれやれと思っていると、この12巻でまた頭痛がしてきた。

ウィーン会議から普仏戦争までのヨーロッパの黄金時代を描いた19世紀史。

メッテルニヒはただの反動、急進派の暴力は常に正しい、挙句の果てに終章はマルクスのパリ・コミューン礼讃で幕を閉じるという構成で、まあ正直言ってウンザリである。

フランスの真の偉大さは革命の馬鹿騒ぎを繰り返したことではなく、ジャコバン独裁とパリ・コミューンの不幸から学んで全体主義への免疫をつけ、20世紀に近隣諸国がその種の疫病に冒されたとき、際どいところで何とか踏みとどまったことであるといった視点は微塵も無い。

「進歩」への盲信がせっかくの物語的面白さを台無しにしている。

本シリーズでは10巻に次いで出来が悪い。

読むに耐えないとまでは言いませんが、進んで再読しようとは思いませんね。

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塚本青史 『呂后』 (講談社文庫)

宮城谷昌光氏と同じく、この人も中国史を題材に採った歴史小説を多数書いてる人だが、どうも積極的に読む気がおきない。

本書は私の好きな前漢時代を扱ったものなので、読んでみたが何か俗っぽい描写が多くあまり感心しなかった。

劉邦死後の宮中内抗争のあらましを楽に頭に入れられるのはいいんですけどね。

司馬遼太郎の『項羽と劉邦』と比べるのはあまりに酷ですが、まあ正直雲泥の差があります。

塚本氏の文章が趣味に合う人なら、宮城谷氏と同じく著作が多いので読み応えがあるでしょう。

一度書店か図書館で手にとってお確かめください。

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ジョン・ルカーチ 『ヒトラー対チャーチル 80日間の激闘』 (共同通信社)

1940年の“バトル・オブ・ブリテン”の詳細を描いた本。

結構面白かったと思います。

すみません、読んだけれど内容はあまり覚えてないんです。

ネタ不足を補うために今所持してない本を主に書いてますんで、中身はうろ覚えだったりあまり面白いと思わなかった本も記事にせざるを得ないので。

私が否定的なこと書いてる本でも、それを面白いと思う方もいますから、このブログは基本的にタイトル紹介だけが主だとお考えください。

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司馬遼太郎 『ロシアについて』 (文春文庫)

司馬遼太郎の外国に関する著作は数が少なく、何でも貴重だなと思うのでこれも買って読んでみた。

ロシア史への考察に鋭いものがるが、如何せん分量が少なすぎる。

後半はロシア史そのものより日露関係史が中心となり個人的に興味が薄れた。

まあ安いし楽に読めるし、ざっと一読しといてもいいんじゃないでしょうか。

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中屋健一 責任編集 『世界の歴史 11 新大陸と太平洋』 (中公文庫)

前巻をやっとこさ乗り超えてアメリカ史です。

変な偏りもない、ごく普通の通史。

それは結構なんですが、何と言うか、焦点が定まらないというかどうもまとまりのない記述が淡々と進むといった感じでもう一つである。

初心者向けアメリカ史入門書としてはやはりアンドレ・モロワ『アメリカ史』に勝るものはないのかなと思ってしまう。

最後の2章くらいはオーストラリア史。

このシリーズではアフリカ史はもちろん、東南アジア史も完全に抜け落ちてるんですが、この辺に時代を感じますね。

さほど面白くもないが、そこそこの内容を持つ本と思います。

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A・J・P・テイラー 『第一次世界大戦 目で見る戦史』 (新評論)

テイラーの本は『近代ドイツの辿った道』でかなり懲りたのだが、本書は通常の手堅い戦史として面白く読めた。

平板で退屈な記述でなく、戦略・戦術と戦局の因果関係をわかりやすく明示し、各国の国民心理にも踏み込む説明で、非常に有益。

図版・写真が豊富なので、本の厚みから感じるほど本文は長大ではない。

どこかの出版社が再版してくれないかなあ。

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桑原武夫 責任編集 『世界の歴史 10 フランス革命とナポレオン』 (中公文庫)

一冊まるごとフランス革命とナポレオン時代だけに充てられた巻。

豊富なエピソードと流暢な描写でなかなか読ませるのは他の巻と同じである。

しかし読んでいてこれほど苦痛を感じる巻もまた無かった。

革命諸党派の消長はそれらが基盤とする階級間の力関係だけから説明されうるというガチガチの階級闘争史観はともかく、本書の全体的な革命観にどうしようもない隔絶した距離を感じる。

著者たちによれば、革命は人類の進歩の一大道標であり大いなる祝福であって、以後200年に亘る西欧文明と人類の自殺未遂の始まりではない。

ロベスピエールは20世紀の全体主義独裁者の不吉な前兆ではなく、早く来すぎた解放者である。

聖なるもの、高貴なものを泥土に踏みにじる快感に酔った挙句、自ら独裁と貧窮の中で悶え苦しむこととなった知識人と民衆への醒めた視線は無い。

卑しく醜い集団暴力の犠牲となって筆舌に尽くしがたい苦悩を強いられた国王一家をはじめとする人々に対する同情も無い。

旧体制のフランスが王政の下で、法と慣習と信仰に支えられた秩序ある自由を徐々に実現しつつあったのではないかという懐疑も全く無い。

あるのは人間性への無邪気な楽観と社会の合理的再編成に対する浅薄な信仰、そしてその手段としての暴力の必要性に対する確信だけである。

時代を考えればやむを得ないし、もっと教条的な本もあるのだがら、本書だけ槍玉に挙げてもしょうがないとわかってはいるが、とにかく酷い。

個人的には間違いなく本シリーズのワースト1。

再文庫化されたらこの巻だけとばして読むことはしないだろうが、できれば二度と読みたくないという気持ちもある。

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田村実造 責任編集 『世界の歴史 9 最後の東洋的社会』 (中公文庫)

前にも書きましたが、本シリーズでの中国史の完成度は極めて高い。

これまでの研究の蓄積から、素人にも読みやすく面白い要素を抽出して、それを達意の文章で表現してくれている。

その他インド史、西アジア史、朝鮮史の部分も簡略ながら非常に良い。

西アジア史の章では、「この分野の研究は日本ではまだまだ日が浅いので、以下の叙述も不十分なものとなる恐れがある、これから優れた研究者が多くでることを期待したい」みたいな楽屋話がいきなり出てきてちょっと驚くが、それでも十分面白い。

全般的に見て非常に優れた啓蒙書に仕上がっている。

残念ながらこれだけ手放しで賞賛できるのは本シリーズではこの巻が最後になるのだが。

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マルクス・アウレーリウス 『自省録』 (岩波文庫)

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしく。

さて、今年最初の本はこれ。

有名な哲人皇帝の主著。

短文の集まりなので読みやすい。

卑小で醜い自分の心が洗われる思いがする文章が少なくない。

こういう人が大帝国の政治指導者だったことに一種の「奇跡」を感じる。

ストア哲学に関する専門的な予備知識は全く要らない。

たまにはこういう本をじっくり読んで清明な心境に至るのも宜しいかと。

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