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G・M・トレヴェリアン 『イギリス史 全3巻』 (みすず書房)

今まで通読しようと2回取り組んで2回とも挫折していた本書を三度目の正直でやっと読了。

このブログでちょっとでもマトモな本をご紹介しようと思って、無理にでも読書意欲をかき立てて読破しました。

読者の方には碌に役立っていないブログでしょうが、書いてる本人の立場からすると今まで読めなかった本も読めて自己充足度は非常に高いです。

さてこの本ですが、極めて重厚で正統派の標準的イギリス通史。

よく整理され明快でわかりやすい史実の描写と、的確・穏当でいかなる意味の教条主義とも無縁な著者の論評が実にうまく混じり合って、歴史叙述のお手本とも言える傑作に仕上がっています。

例えば以下のような文章。

トーリー党は、バークの晩年における反ジャコバン的心情に教えられて、フランス革命のあやしい光に対抗するイギリスの名誉革命体制の真の後継者・護持者たることをみずから誇るにいたった。トーリー主義はジャコバンの「直接行動」とナポレオンの人民的専制に対して、議会政治を擁護する立場に立ったのである。この立場を形成することによって、トーリー主義は世界に対して偉大な政治的貢献をなしたのであって、このことは長い戦争が終わった後に、キャニングのトーリー主義に関する独自の見解が一時ヨーロッパの自由と同義語となった時、きわめて明瞭となった。しかし、トーリーが代表するこの議会主義的立憲体制は、彼ら自身の定義に従えば、「民主制」でもなければ「代議制」でもなかった。それは主として貴族主義的ではあるが、民衆的要素をともない、場合によっては国王の介入する余地をも残した「混合政体」であったのである。

トレヴェリアン自身はホイッグ的な穏健進歩史観の持ち主と思われるのだが、それにも関わらずこのような透徹した認識をもっていることが明白なので、心底安心して読める。

(トレヴェリアンは以上の文中に記されている体制から民主制への漸進的移行を是としている。私はこのような安定して非専制的であることを保障された政体からのそれ以上の「進歩」ははっきり言って必要ないんじゃないかという感想を持つのだが、読んでいて違和感を抱くことはほとんどないです。)

1巻はやや取っ付きにくいですが、2巻のテューダー朝成立以降は慣れもあってスラスラ読めると思いますので、そこまで持ちこたえて下さい。

全くの初心者が読むイギリス史入門書としてはやはりアンドレ・モロワ『英国史 上・下』(新潮文庫)の方が良いと思うが、それをクリアした次の段階で是非取り組むべき傑作。

強く推奨させて頂きます。

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