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吉川忠夫 『劉裕』 (中公文庫)

東晋の跡を受けた南朝宋の建国者の伝記。

生き生きとした筆致で、歴史小説のように面白く読める。

まず東晋の歴史の復習ができる。

忠臣王導の功による建国、軍閥桓温の専横と死、謝安による政権安定と淝水の戦いでの前秦・苻堅撃退、桓温の子桓玄の台頭、対立する劉牢之の自殺と桓玄の専制。

劉牢之の部下であった劉裕は桓玄を打倒し、東晋王朝の第一実力者にのし上がる。

氐系苻氏の前秦滅亡後、華北は鮮卑系慕容氏の南燕、鮮卑系拓跋氏の北魏、羌系姚氏の後秦、匈奴系赫連氏の夏などが割拠する混乱状態にあった。

劉裕は北伐を行い、山東の南燕を滅ぼし、さらに後秦をも滅亡させ、ごく一時的にではあるが、洛陽・長安を回復する。

その勢威をもって禅譲を行わせ、宋の武帝として即位するが、在位二年足らずで病没。

ちなみにかつて劉牢之の下で劉裕の同僚であった詩人の陶淵明は劉裕の簒奪に対して批判的な詩を残している。

本書は事前に予想していたよりはるかに良かった。

この複雑極まりなく難解な時代を整理するための貴重な手段となりうる本。

印象深い叙述で史実の流れがよく頭に残る。

初心者にとっては非常にありがたい。

同著者で、同じ南朝時代を扱った『侯景の乱始末記』(中公新書)が何かやたらと名著だ名著だと騒がれているようなので借りてみたところ、さほど面白いとも思わなかったのだが、本書の出来からするとやはり素晴らしい本なのかもしれない。

本書と併せて是非復刊してもらいたいです。

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