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三石善吉 『中国、一九〇〇年 義和団運動の光芒』 (中公新書)

義和団事件をその前史である山東省の反キリスト教運動から概観したもの。

10年ほど前に出版されたとき気付いてはいたが、やたら細かい地名・人名が出てくるという理由で敬遠していた。

しかし一度読み始めると、予想よりはるかに楽に読めた。

例示されている様々な史実は暗記するのではなく、事件全体の概要把握や評価のための材料と考えて読んでいけばいいと思う。

義和団の乱について中国の公式評価は「中国人民の偉大な反封建・反帝国主義闘争」というものですが、最近袁偉時という人が「義和団は反文明の狂気の愚行、太平天国は残虐な独裁政権」とした論文を書いて掲載雑誌が停刊処分を受けたなんて事件がありましたね。

本書ではキリスト教宣教師と西欧勢力の横暴と圧迫が義和団暴発の主原因としながらも、反乱の過程で起こった恐ろしい残虐行為も同時に記していて、中国当局の見解をそのまま是認しているわけでもなく、まあバランスが取れていると言えるんじゃないでしょうか。

1860年の北京条約でキリスト教布教の自由が認められた後、「教民」(中国人キリスト教徒)と非教徒の間に対立が生まれ、双方の不正行為や誤解・偶発的事件によって憎悪が激しくなり、1898年の列強による中国分割を媒介にして凶暴な排外主義を生み出してしまう。

本書を読んでいるとその過程がほとんど必然のように思えてきて、個人的には、全く異なる価値体系の思想が急激に外部から流入すること自体が不幸の源じゃないかなあという感想を持った。

読みやすくてなかなか良い本だと思います。機会があればどうぞ。

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