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井上浩一 『生き残った帝国ビザンティン』 (講談社学術文庫)

以前講談社現代新書から出ていたものの文庫化。

新書(文庫)一冊という短いページ数でビザンツ帝国一千年の歴史を概観しているため、取り上げられている皇帝・事件・社会の動きなどは全体のごく一部に過ぎないが、その選択が非常に絶妙で、大きな空白を感じさせない。

精選された記述によって帝国の政治と社会の大まかな変遷を知ることができる。

史的解釈も明解で鋭いものを感じた。

テーマの大きさに比べて紙数の乏しいこの種の入門書でありがちだが、内容がスカスカで細かな事実も全体的解釈も共に頭に入らないという弊害を免れている。

目立たないが、これはなかなかの名著ではないでしょうか。

新書版で出ていた際、書店や図書館で見かけていたが、「どうせありきたりの駄本だろう」と無視していた自分の眼力の無さを思い知りました。

一番最初に読むビザンツ史としては、岩波新書の『コンスタンティノープル千年』『中世ローマ帝国』より、こちらの方が一般的でずっと良いです。

具体的記述としては、ユスティニアヌス1世以後ずっと衰退期といったイメージのある帝国であるが、本書では10世紀半ばから11世紀初頭にかけて在位したニケフォロス2世、ヨハネス1世、バシレイオス2世治世下の繁栄を強調しているのが印象的。

この三代の間、セルジューク朝以前の分裂期であったイスラム圏、ブルガリア人、ロシア人に対して盛んな外征を行い、帝国の全盛期を築いた様が記述されている。

かなり面白いです。

全体の構成も見事だし、文章も巧い(と思う)ので、かなりのスピードで通読できます。

良質な啓蒙書として推奨させて頂きます。

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