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伊原弘 梅村坦 『宋と中央ユーラシア (世界の歴史7)』 (中央公論社)

北宋・南宋および遼・金・西夏史の巻。

タイトルには現れないが、高麗時代の朝鮮史と雲南の大理国の歴史にも一章が割り当てられている。

第1部の宋史では、冒頭の中国史における宋王朝の意義などに触れた部分が非常に面白く、大きな期待を持たせたが、それも一瞬だけ。

やはりこの巻でも、社会史・経済史・生活史の比重が極めて高く、どうにも爽快感の無い記述。

昔ながらの物語的歴史などは書くつもりはないので別の本で済ませて下さいという事なのかもしれないが、別の本といってもそれほど適切な本が多くあるわけではない。

結局、旧版の宮崎市定『宋と元』でも引っ張り出してくるしかなかったりする。

本書の社会史的記述が全然興味が持てないとか面白くないということはない。

この時代の農民が、地主や王朝に一方的に搾取されて食うや食わずの貧困状態だったというのは実態とはかけ離れているとか、意外な見解を知る部分もある。

しかし、果たしてこれが初心者が最初に読むべき本でしょうか。

「向こう岸にはこういう豊かで面白い世界がありますよ」と言われながら、その間の川に架かっている橋は落とされているといった感がしないでもない。

(下手な喩えですみませんが。)

なお、第1部の終章が高麗・大理国史なのだが、大理国はともかく高麗史が10ページに満たないのは如何なもんでしょうか・・・・・・。

配分がかなりおかしくないですか・・・・・?

前にも書きましたが、やっぱり朝鮮史は独立の一巻を立てるべきだったんじゃないでしょうか。

北アジア・中央アジア史の第2部に入ってもあまり叙述の質は変わりませんねえ。

840年にウイグルがキルギスに破れて、モンゴル高原の覇権を失い、西走して中央アジアに定住し、この地域のトルコ化が進んで「トルキスタン」が成立したということは教科書にも書いてあります。

高校教科書には出ていませんが、そのウイグル人が建てた国が「天山ウイグル王国」であり、この国は、東は遼・西夏のちに金、西はカラ・ハン朝、カラ・キタイ(西遼)に接し、最後はチンギス・ハンに服属する。

本書ではこの国を詳しく取り上げて、その社会、通商、文化に関してかなりのページを割いている。

これも悪いとは言いませんけど、遼・金・西夏の記述量と比べると、やはりアンバランスさは否めない。

この巻も、通読は容易だが不完全燃焼といった感じ。

今風の概説と、自分が求めている初心者向け基本書とのギャップを改めて思い知らされた。

これまで読んだ巻では、イスラム史やインド史など、そもそも出回っている本が少なく、自分自身も知識が特に乏しい分野はかなり面白いと感じたが、中国史やヨーロッパ史などの伝統的分野はやはり厳しい。

私の好き嫌いが激しすぎるのかもしれませんが、この種の社会史中心の概説はどうしても合いません。

私ほど偏った嗜好を持っていない方にとっては良質な入門書と言えるのかもしれませんが。

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