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加藤祐三 川北稔 『アジアと欧米世界 (世界の歴史25)』 (中央公論社)

タイトルを見て、主に19世紀におけるアジアの植民地化の歴史をざっと叙述する本なんだろうなあと思って目次を眺めたら、何やら様子が違う。

広く近代以降のアジアと欧米諸国との貿易や国際関係について概観する内容らしく、「そういうテーマ史だけで一巻費やすの?」と奇異の念に捕われる。

ギリシア・ローマ史のように明らかなページ数不足と思われる地域と時代もかなりあるのに、この配分は、意気込みは買うにしてもやはりちょっと変じゃないかと言いたくなる。

そういうモヤモヤした気持ちを抱えながら読み始めたが、最初の二章は特に悪くもないが、大して面白くもない。

「こりゃやっぱりハズレかな」と思いながら、川北氏(『砂糖の世界史』の著者)執筆の第3章以降に入ると、印象が全く一変する。

極めて良質で有益な経済史。

「近代世界システム」、「17世紀の危機」、「ジェントルマン資本主義」などの用語を極めて平易に説明してくれている。

大航海時代以降、世界規模の貿易システムが展開した後、ヨーロッパの生活革命に連動して貿易構造が変化し、それが覇権国の盛衰を引き起こす様を、まるで手に取るようにわかりやすく理解させてくれる。

私は他の概説書で、これほど面白い経済史を読んだことがない。

素晴らしい。傑作。

上記『砂糖の世界史』を読むより、少々手間でも本書を読んだ方がはるかに良いと思う。

これには本当に感心させられました。

川北氏の担当章が終わると、加藤氏には申し訳ないのですが、かなりテンションが下がります。

しかし「拙著『イギリスとアジア』(一九八〇年)」という言葉を見て、「えっ」となる。

私は未読ですが、このタイトルの岩波新書はかなり前から知ってましたし、結構有名ですよね。(追記:←と、最初にこの記事を書いたときには思ったのですが、ひょっとして『イギリスと日本』と勘違いしていたんではないかと、読み返して気付きました。)

調子が良過ぎるかもしれませんが、それを知ると、何か前半の文章よりかは面白いと思えるようになった。

日本の開国を扱った章では、幕府の外交をその当時としては最善に近いものだったとして高く評価しているのが印象的。

最初と最後はもう一つですが、中盤は非常に面白くてためになる。

相変わらず自分の第一印象は当てにならんなと反省させられました。

あと、最後の参考文献欄と年表を眺めていて思ったことを書きます。

この巻だけじゃなく中公新版の全集すべてに当てはまるのですが、参考文献がただ並べてあるだけで、著者のコメントが一切付いていないのが非常に残念です。

講談社旧版の全集ではコメントが付されており、これがものすごく助かる。

各書の特徴や難易度、適切な用途など、ごく簡略に一言二言書かれているだけでも初心者にとっては極めて有益で参考になるんですが。

それと年表があまり役に立たないことが多い。

ほとんどの巻で上段が主要対象地域、中段がその他の地域、下段が同時代の日本という構成で、特色が無い。

狭いスペースで無理に同時代の事項を付け加えているので、肝心の主要史実の年表はただ漫然と並べてあるだけという感じになってる。

もうちょっと工夫してわかりやすく有益なものに出来ないでしょうか。

一般向け啓蒙書として、そういう行き届いた配慮があればなお良かったのにと思ってしまいました。

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