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木村幹 『韓国現代史 大統領たちの栄光と蹉跌』 (中公新書)

08年8月刊。

日本の敗北から李明博現政権までの韓国政治史を叙述した本。

大統領の列伝をただ重ねた形式ではなく、年代で区切ってその時在任していた大統領だけでなく、将来の就任者の活動も記述している。

例えば、李承晩時代の朴正熙、金泳三、金大中といった具合。

これが非常に面白く、その試みは十分成功している。

全体的に史実の配列とその説明が適切で極めて理解しやすい。

巻末に置かれた「韓国政党変遷図」と「韓国の憲法制度変遷」という図も有益。

特に前者は極めて貴重なので、本文を読みながら常に参照すべき。

最後の年表も詳細でとても役に立つ。

これら図表も含めて丁寧な作りの本で、非常な好印象を受ける。

本書を読んでいく上で、大統領の任期はもちろん憶えるべきだが、それだけでなく建国から現在まで政体によって区分される六つの共和国と一つの軍政期の存続期間(多くは大統領任期と一致しますが)と、与野党の主要政治勢力が頭に浮かぶようにすべき。

与党系として、自由党、民主共和党、民主正義党、民主自由党・・・・・など。

なお野党勢力分立の系譜は類書が少ないだけに、本書の記述は極めて貴重。

その離合集散の過程を正確に記憶するのはちょっと苦しいかもしれませんが、民主党、民政党、民衆党、新民党、新韓民主党、統一民主党、平和民主党など、主要政党の名前はできれば指導者共々、大体頭に浮かぶくらいにはなった方がいいでしょう。

本書の欠点としては、尹潽善のような知名度の劣る大統領や、前職・現職の盧武鉉・李明博が取り上げられているのに、全斗煥・盧泰愚という重要性の高い大統領が背景説明としてしか記述されていないところ。

著者もあとがきでこの点に触れ、両者が退任後裁判にかけられたせいで客観的研究に乏しく、詳細な記述を断念したと書いている。

ただ、こういう啓蒙書レベルの本なら、著者自身の見解を基に、他の大統領と同様の形で書くことができたのではと思われてならないので、これはやはり残念。

また叙述の対象はほぼ内政に限られ、北朝鮮および諸外国との関係には最小限度触れられるだけである。

(これは紙数の問題もあるでしょうし、かえってコンパクトな通史になるという利点もあるでしょうが。)

以上を差し引いても、初心者にとって極めて有益な入門書であることに変わりありません。

予備知識はほとんど不要で、最後まで熟読すれば非常に力がつく。

強くお勧め致します。

借りてもいいですけど、買って手元に置いておく価値のある本だと思います。

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