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天児慧 『中華人民共和国史』 (岩波新書)

岩波新書が続きます。

世界史読書の観点からすると、中公新書に比べると読みたい本ははるかに少ないですが、気になるものはこの際どんどん潰していきます。

1999年、人民共和国成立から50周年の年に出た通史。

本書の刊行からでも、もう10年経っちゃったんですよね・・・・・・。

200ページちょっとの本文で、半世紀の中共史を記述するわけだから、かなり内容が薄いんじゃないかとの危惧を持ちながら読み始める。

ところが、いい意味で期待を裏切られた。

コンパクトで簡便な通史でありながら、重要項目はしっかり押さえられており、史実の本筋が捉えやすい。

巧みな文章で記される、キビキビした説明は明解で非常に有益。

初歩的な段階から必要十分の知識を得るところまで、スムーズに読者を引き上げてくれる。

簡易な叙述の中に、中級者でも役に立つ視点をさり気なく含ませているのもなかなか良い。

例えば、林彪事件について、毛沢東・周恩来の対米接近・ソ連主敵論に対して、林彪が対米対ソ二正面対抗路線を主張したためという、外交戦略の対立を原因とする見方は根拠が薄いと断言しているところなど。

史実評価の基準も適切・穏当で、妙なバイアスを全然感じない。

同じ岩波新書の小島晋治・丸山松幸『中国近現代史』にそれをやや感じるのとは異なる。

(ただ、この本も改革開放期以後の著作ですから、文革礼賛とかそれほど常識外れのことは書いてないですけど。)

初心者にとってはかなり使える本です。

中国現代史入門書としては、やはり中嶋嶺雄『中国 歴史・社会・国際関係』(中公新書)が依然一番優れていると思うが、高校教科書から中嶋氏著に行く前に、本書でワンクッション挟んでもいいかもしれない。

80年代初頭までの中嶋氏著に比べ、90年代までフォローしているのもよい。

(それから10年はまだジャーナリズムの分野ですが、何かで補強しましょう。)

楽に読める割には、効用が大きい。

お勧めします。

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