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牧野雅彦 『ヴェルサイユ条約 マックス・ウェーバーとドイツの講和』 (中公新書)

今年1月の新刊。

著者は歴史研究者ではなく、ウェーバー研究者とのこと。

第一次世界大戦後のパリ講和会議の経緯と、そこで提起されたドイツの「戦争責任」問題に対して、「心情倫理」と「責任倫理(結果倫理)」の区別で有名なウェーバーがどのような態度を取ったのかが、主なテーマ。

本書を読む上で、1917年1月無制限潜水艦作戦、ロシア3月革命、4月アメリカ参戦、ロシア11月革命、1918年1月14か条の平和原則発表、3月ブレスト・リトフスク条約、3~7月ドイツ軍西部戦線での最後の大攻勢、11月ドイツ革命・休戦協定調印、1919年1月スパルタクス団の蜂起鎮圧・パリ講和会議、6月ヴェルサイユ条約調印、という時系列は事前に頭に入れておいて読み進めるのが良い。

非常に多くの論点を持った本なので、内容はメモしにくいが、硬直した理想主義一辺倒の政治家というイメージのあるウィルソンが、必ずしもそうとは言い切れない微妙な面を持っていたことなどが述べられている。

ドイツ側政治家の主役は、過酷な講和条約の調印拒否を主張した外相ブロックドルフ・ランツァウと、受諾やむなしとした中央党所属の蔵相エルツベルガー。

結局ドイツは戦勝国の圧力に屈し調印するが、もし拒否の姿勢を貫いていたらどのような状況が考えられたかが、ブロックドルフ・エルツベルガー両者の対立を記述する中で、検討されており、それがなかなか面白い。

最後の第7章「ウェーバーとヴェルサイユ条約」では、全体の論旨がわかりやすく述べられており、非常に助かる。

かなり良い本だと思います。

熟読すれば、様々な事実関係の知識と、柔軟な視野を身に付けることができる。

なお、新書にしては珍しく、詳細な註が多数付いていますが、そこにも結構重要な情報が含まれていたので、飛ばし読みせずに精読した方がいいです。

巻末にまとめてあるのではなく、見開きページの最後に付けてある形式ですので、読みにくくはありません(活字はかなり小さめですが)。

是非お勧め致します。

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