ジョゼフ・ギース フランシス・ギース 『中世ヨーロッパの城の生活』 (講談社学術文庫)
同じ著者の『都市の生活』、『農村の生活』の読後感が比較的良好だったので、これも読みました。
領主・騎士という支配層から見た中世ヨーロッパ社会点描。
主に、11世紀から13世紀の中世盛期におけるイングランドとウェールズの事例が取り上げられている。
このシリーズすべてに言えることですが、読みにくいと感じた部分は軽く流して、どんどん読み進んだ方がいいです。
途中から興味がわいてくる文章が出てきて、楽にページが手繰れるようになりますので。
本書も、上記二著と同じく、なかなか良い。
社会史関連で、中世ヨーロッパはかなり類書が多い分野だと思いますし、他にもいい本が幾らでもあるんでしょうが、とりあえず『刑吏の社会史』、『魔女狩り』、『ペスト大流行』とこのシリーズ三点を読むだけにしておきます。
村の人口の大部分を占める農奴にとって、理屈の上では領主が絶対的権力者だった。領主は農奴の地代や奉仕の義務を勝手に増やしたり、所有物を差し押さえたりすることができるとされていた。しかし、実際のところは、昔から積み重ねられた慣習が法律と同じような効力を持っていて、領主の法的立場を制限していた。それに、小作人の奉仕がなければ領主の暮らしが立ちゆかないという現実もあったから、小作人たちが逃げ出したり、反抗を企てたりするほど締めつける領主はまれにしかいなかった。小作人は奉仕の義務を怠らない限り、小作地を維持し、跡継ぎに譲ることができたのだ。森や荒れ地も厳密には領主の所有物ではあったにしろ、小作人は慣習によって決められた範囲内で開拓することもできたのである。・・・・・小作人と領主との関係は互恵的、現実的であり、その上、永続的なものだった。農奴は土地にしばられてはいたが、同時に、その小作地を奪ってはならないという慣習によって守られてもいたのだ。
それぞれの階級の枠内で機会が均等に与えられ、隣人同士が協力して働き、身分と血筋の維持が重視された村の共同体の理念は、何世紀にもわたって保たれた。これとは対照的に、中世の都市生活者が理想とし、職人ギルドが目指した理念―各人がそれぞれの職業に勤しみ、作ったものを売り、極端な金持ちも貧乏人もいない社会―は、ほんの短い期間、しかも不完全な形で実現したにすぎず、やがて商業の発達によって大商人が生まれ、貧富の差がますます開いていくことになる。
村の理念が長く続いたのは、主に貨幣経済の浸透が地方ではゆっくりと進んだからである。成功した都市住民を豊かにしたような新しい事業や産業を起こす場は、荘園制のもとでは生まれにくかったのだ。イングランドで資本家農民が出現し、耕作地が囲い込まれて牧草地となり、小作人が賃金労働者に変わったのは十六世紀になってからだった。そして、歴史家R・H・トーニーの言葉によれば、「農奴はいなくなったが、救貧法が制定される」ことになってしまったのである。
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