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福永文夫 『大平正芳 「戦後保守」とは何か』 (中公新書)

去年の12月刊。

1972年佐藤栄作長期政権退陣から80年代半ばまでの内閣を順に並べると以下のようになる。

72年 田中角栄

74年 三木武夫

76年 福田赳夫

78年 大平正芳

80年 鈴木善幸

82年 中曽根康弘

87年 竹下登

30代前半以下の方は最初の方の首相は全く記憶に無いでしょうが、私は福田さんからはおぼろげながら覚えている年代。

小学生だったが、大平正芳首相については、「国会でアーウーという言葉を頻繁に挟みながら答弁する鈍重な感じのおじいさん」という世間のイメージが記憶にある。

70年代は2年ごとに政権交代が繰り返され、80年代中曽根政権が例外的な長期政権となる。

この中で、一般的にいって評価が高いのはやはり中曽根政権だと思うが(福田和也『総理の値打ち』のように違った観点の本も有り)、意外と大平政権の評価が高かったりする。

例えば、高坂正堯氏が大平氏について、「諸外国の指導者に不思議と信頼感がある」「この時期の首相で安全保障問題に真剣な関心を持っていたのは中曽根氏と大平氏だけだ」という意味のことをどこかで書いてらしたのを覚えている。

本書の159ページにある「自民党派閥の系譜」という図を見ながら書くと、大平の属した宏池会は、池田勇人→前尾繁三郎→大平正芳→鈴木善幸→宮沢喜一→加藤紘一・河野洋平→麻生太郎・古賀誠・谷垣禎一という流れになる。

この派はいわゆる「保守本流」で、「軽武装・経済立国」という「吉田ドクトリン」に忠実なグループ。

(麻生氏はちょっと違う気がするが。)

その点、同じ吉田派から出た、佐藤栄作→田中角栄→竹下登→橋本龍太郎→小渕恵三→津島雄二の流れも同じ。

それに対し、岸信介→福田赳夫→安倍晋太郎→三塚博→森喜朗→町村信孝は改憲志向で復古ナショナリズム色が濃い。

他の派閥では、三木武夫→河本敏夫→高村正彦のラインが前者、河野一郎→中曽根康弘→渡辺美智雄→山崎拓・伊吹文明は後者に親和的という理解でいいのか。

以上のような自民党内の諸勢力の抗争の描写を交えながら記された伝記。

著者は戦後民主主義に融和的な柔軟な保守政治家としての大平を好意的に捉えているようだ。

割と良い。

戦後政治史としても使えるので悪くない。

ものすごく面白いとか、目から鱗が落ちたとか、そういう感じでもないですが。

一読すればそれなりに得るものはあるでしょう。

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