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増田弘 『マッカーサー フィリピン統治から日本占領へ』 (中公新書)

前回記事の『諸子百家』と同じく今年3月刊。

この人はザビエル、ペリーと同様、「日本史上の人物」になってしまっているので(前二者よりもはるかに不快な形でですが)、カテゴリはアメリカではなく近代日本にします。

それにしても長い・・・・・。

長過ぎる・・・・・。

私の知る限り、中公新書で一番分厚い本(本文460ページ超!)。

薄い新書版2冊分のボリュームがある。

生涯の全時期を万遍なく叙述するというのではなく、生い立ちや軍歴初期の描写はごくあっさりしたものであり、末尾は朝鮮戦争中の解任で唐突に終わりとなっている。

本書の特徴はサブタイトルによく表れている。

フィリピン方面軍司令官から陸軍参謀総長を経て、35年独立準備のために発足したフィリピン連邦政府軍事顧問、日米開戦時には在フィリピン米極東陸軍司令官という経歴が示すように、マッカーサーとフィリピンとの深い関わりに着目するもの。

始めに、日本占領に先立つフィリピン統治を重視して考察するという著者の方針が書いてあるのですが、ところが読み進むとそうした記述は意外なほど少ない。

歴史解釈の提示に極めて乏しく、事実関係の叙述がひたすら続くのみ。

まず配下にいた側近たちのやたら詳しい肖像が述べられるのに参ってしまう。

以後、日本軍侵攻を受けたバターン半島・コレヒドール島への撤退、高速魚雷艇を用いたオーストラリアへの脱出、「飛び石戦略」による反攻とフィリピン奪還、日本の降伏に至る太平洋戦争の細かい戦史が続く。

肝心の日本占領についての記述もごく普通の通史的記述があるだけ(そこからごく薄く感じられる史的評価は比較的穏当でそれほど悪くないとは思うが)。

最初に著者自身が述べたコンセプトと、本文の記述形式が全然合ってないんじゃないでしょうか?

何とも不思議な読後感を持ってしまった。

文章は巧いと思うし、それゆえ量の割には短期間で読める。

また、事実関係については他の本で載っていないことを教えられる部分も多かったので、それなりに有益ではあるが、初心者が優先して読むような本ではない。

枝葉の部分を削ってコンパクトにまとめるべきところをそのまま推敲無しに未完成のまま出してしまった作品という失礼な印象を抱いてしまう。

強いてはお勧めしません。

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