« 高橋正衛 『二・二六事件 「昭和維新」の思想と行動 増補改版』 (中公新書) | トップページ | 水谷三公 『王室・貴族・大衆 ロイド・ジョージとハイ・ポリティックス』(中公新書) »

高橋正衛 『昭和の軍閥』 (講談社学術文庫)

前回記事の『二・二六事件』と同じ著者。

これも元は1969年中公新書から出ているが、その後品切れ、2003年講談社で文庫化。

上記『二・二六事件』はあまり良いとは思えなかったが、ついでなのでこれも読んでみた。

自分としては昭和陸軍の派閥抗争についての基礎的粗筋を平易に説いてくれる本を期待して手に取ったのですが、どうも様子が違う。

レベルは思ったより高く、序を含む全8章のうち、最初の四つは軍隊の基礎事項、政軍関係、軍閥の起源、時代背景、隊付将校の実態などが、多くの史料の引用と共に述べられている。

第4章が、1931年の三月事件・十月事件、32年の血盟団事件、五・一五事件の描写。

第5章がやっとタイトル通りの軍閥抗争の系譜で、1931年12月犬養内閣成立と荒木貞夫陸相就任、それによる宇垣(一成)時代終焉以後の皇道派と統制派(著者はこの呼称は必ずしも適切でないとしている)の対立に関する叙述。

6、7章が二・二六事件以後の粛軍と軍の政治介入の完成を述べておしまい。

一点だけ、全般的な感想を言うと、当時の青年将校と民間右翼の革新思想の過激さに驚かされる。

「一君万民」の考えを除けば、ほとんど急進左翼と変わりない。

これを描写する著者の筆致は、初版の刊行年度を考えると、戦前の右翼を全共闘など当時の左翼運動になぞらえる皮肉だったのかなという気が少ししました。

これもあんまりいいとは思えない。

取り上げられている人名や事項が詳しすぎて、白紙状態の初心者が読むのは相当苦しい。

事前にある程度基礎知識を持っていないと、良さが全然わからない。

特にお勧めしたい本でもなかったです。

|

« 高橋正衛 『二・二六事件 「昭和維新」の思想と行動 増補改版』 (中公新書) | トップページ | 水谷三公 『王室・貴族・大衆 ロイド・ジョージとハイ・ポリティックス』(中公新書) »

近代日本」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。