« カール・マルクス 『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日 [初版]』 (平凡社ライブラリー) | トップページ | 引用文(トクヴィル1) »

フランス二月革命についてのメモ

カール・マルクス『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』(平凡社ライブラリー)の記事続き。

革命後制定された憲法では大統領と議会の双方の権限が強力で、両者の関係を調整する手段が熟慮されておらず、大統領の再選も禁止されていたため、クーデタを誘発する可能性が高かったというようなことが書いてあった。

ルイ・ナポレオンが大統領として最初に任命した内閣はオルレアン派バロと正統王朝派ファルーの秩序党内閣。

国民衛兵と第一師団(パリ防衛を担当する常備軍)司令にはシャンガルニエ任命。

国民衛兵とは一定の財産資格を持つ市民からなる非正規民兵。

1849年5月憲法制定議会に替わる立法国民議会選挙でブルジョワ共和派激減、秩序党の勝利と社会民主派の進出。

6月小市民的民主派の武装蜂起、一年前に続く「もう一つの六月暴動」、シャンガルニエにより粉砕、ルドリュ・ロラン亡命。

小市民的基盤を持つ国民衛兵は一年前の「最初の六月暴動」では正規軍と共にプロレタリアを鎮圧したが、この「二度目の六月暴動」では自ら蜂起に加わり鎮圧される。

以後議会は秩序党が支配、それと権力を虎視眈々と狙うナポレオンが対立する情勢。

11月バロ内閣解任。

1850年5月新選挙法、三年間の居住規定で選挙権制限、普通選挙を事実上廃止。

これをボナパルト派が利用し、普通選挙復活のスローガンを世論対策に使うことになる。

この時期秩序党内部で正統王朝派とオルレアン派の対立が深まり、秩序党の解体が進む。

議会で多数を占めているのに二つの王朝の争いから王政復古の絶好の機会を逃すというのは第二帝政崩壊直後の第三共和政初期とも共通する展開だなと思った。

1851年1月軍総司令シャンガルニエ解任。

48年の四月総選挙と六月暴動で革命的共産主義者と社会主義者鎮圧、49年五月総選挙でブルジョワ共和派惨敗、同年「第二の六月暴動」で小市民的民主派鎮圧、秩序党は他党派の恨みを買って孤立した上に、上記内部抗争で分裂、結局ボナパルティスト優位の情勢が固まっていく。

大統領任期延長を可能にする憲法改正成立せず。

ルイ・ナポレオンは、安定と繁栄を望む議会外ブルジョワを籠絡し秩序党の支持基盤を切り崩し、確固たる利益代表者を持たなかった分割地農民(小農?)の支持も得て、各階級・各党派を操る。

12月クーデタ勃発。

翌1852年第二帝政開始。

末尾に柄谷行人氏による解説がある。

柄谷氏の名前は知っていたが、私が読めるレベルの著者ではないので、著作は一冊も読んだことがない。

しかしこの解説は意味を十全に読み取れたとは言えないが、それでも興味深く思う部分があった。

重要なのは、社会的諸階級が「階級」としてあらわれるのは言説(代表するもの)によってのみだということ、そしてその場合、つねに代表するものと代表されるものの関係に恣意性あるいは浮動性がつきまとうことである。そして、このことは普通選挙による代表制と切り離せない。・・・・・すべてがこのような形態のrepresentation、つまり代表制を通じてしかあらわれてこないということは、ファシズムあるいは今後の政治過程を見る上で、決定的に重要である。たとえば、ヒトラー政権はワイマール体制の内部から、その理想的な代表制のなかから出現した。さらに、しばしば無視されていることだが、日本の天皇制ファシズムも1925年に法制化された普通選挙ののにちはじめてあらわれたのである。

マルクスが見いだす「反復」は、ナポレオンが皇帝になるまでの過程がシーザーのそれを反復しているということである。もちろん、それはナポレオン自身がシーザーを模倣していたということだけでなく、そこには彼らの意識を超えた構造の同型性があるということだ。・・・・・「王殺し」ののちに成立した共和制があり、そこにおける欠落、不安定を埋めようとする運動が「皇帝」に帰結する。つまり、共和制(議会制)そのものが皇帝を生み出すのだ。ここでわれわれは「王」や「皇帝」を、それらの慣用的な意味から離れて考えなければならない。ここで定義を試みれば、「王」が生まれながらに王であるのに対して、「皇帝」は大統領と同じく諸階級の「代表」としてあるということを意味する。彼は国民に君臨しながら、同時に国民の代表者でなければならない。・・・・・

面白くないこともないが、皮肉や毒舌に満ちたわかりにくい文体なので、慣れるまで苦労する。

批判的比喩の意味を知るために訳注を頻繁に参照する必要があるのも面倒。

(同じページにあるのではなく、巻末にまとめてある昔ながらの形式なので余計。)

なおこの本では、前の記事で触れた政治党派と時代区分に関する表が無いと効用が激減すると思う。

(だから別の版で読むのは勧めません。)

ただ最後まで読めば、そこそこの面白みも有り、初心者にとって有益な点もあろうかと思います。

類書としては、まずマルクスの伝記としてE・H・カー『カール・マルクス』(未来社)

ルイ・ナポレオンについては鹿島茂『怪帝ナポレオンⅢ世』(講談社)が手ごろ。

二月革命については、何と言ってもアレクシス・トクヴィル『フランス二月革命の日々』(岩波文庫)に止めを刺す。

これは是非とも読むべき。

透徹した見解と迫真の事実描写が結合された傑作です。

本書で史実のあらましと主要人物像を頭に入れて準備運動をしてから取り組めばより良いと思います。

|

« カール・マルクス 『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日 [初版]』 (平凡社ライブラリー) | トップページ | 引用文(トクヴィル1) »

おしらせ・雑記」カテゴリの記事

フランス」カテゴリの記事