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ハプスブルク家についてのメモ

河野淳『ハプスブルクとオスマン帝国』(講談社選書メチエ)の記事続き。

対オスマン最前線として「兵営化」していたクロアチアの軍事植民制について。

軍役の替わりに土地を与えられ、在地領主の支配を免れ、ハプスブルク家に直属、裁判・行政においても大幅な自治。

クロアチアはカトリック圏であるにも関わらず、植民者の正教信仰維持が認められ、これは最大の宗教戦争である三十年戦争中でも撤回されなかった。

クロアチア諸侯は中世以来の「人体としての国家論」に基づく王国の一体性を主張し、軍事植民者の自治廃止を訴えたが、国境防衛の重要性の見地から現実論を説くハプスブルクに拒否される。

中世的思弁政治から近代的実証主義政治への移行の前提となる心性について。

「数量化革命」=中世後期からルネサンスにかけて、ものの性質を問題にする考えから、その数量を問題にする考えへと人々の心性が変化したことを示す言葉、クロスビーの論。

「16世紀文化革命」=山本義隆が主張、数量化にとどまらない経験的知のあり方が文字利用の拡大を背景に社会に普及、実践的知識が古典的知をおしのけたことを示す。

その実戦的知が大学というハイカルチャーの場でさらに発展し、17世紀「科学革命」(この言葉は高校教科書にも出てる)に繋がる(ニュートン、ボイル、ホイヘンス、ラヴォワジェ、ハーヴェーなど)。

近代政治は立憲政治のことか?という問題提起。

憲法・国制など抽象的概念装置が公的なものとして秩序を保つことは近代的とは言えない、中世キリスト教共同体の役割を個別の世俗国家が受け継ぎ完成させただけであり、立憲政治自体、イギリスのように目に見えない国王に対する信仰を出発点にしており、立憲的要素とは中世的なものである。

実証主義政治は近世前半の思想のない政治。

英=上記の通り思弁政治が主、17世紀内乱を経て実証主義政治へ。

仏=「ナショナルな聖性」が王権神授説で継続、大革命で実証主義政治に向かうが、同時にナショナリズムという別の思弁政治を生み出す。19世紀以降の他国と同じく思弁・実証主義両政治の共存。

ハプスブルク=オスマンという外圧により実証主義政治に。

フェルディナント1世、マクシミリアン2世の非宗教的実証主義政治。

マクシミリアンの子ルドルフ2世、その弟マティアスに続く、いとこのフェルディナント2世(在位1619~37年)は帝国の再カトリック化という思弁政治的行動を採り三十年戦争へ(しかし対オスマン戦では実証主義政治を維持[クロアチア軍事植民者の自治特権維持])。

1683年第二次ウィーン包囲撃退、1699年カルロヴィッツ条約でオスマンの脅威は大きく後退。

続くスペイン継承戦争で世界帝国を再建するという思弁政治的行動が出るが、18世紀半ばのマリア・テレジア、ヨーゼフ2世時代には実証主義政治が定着。

途中から箇条書きのメモになったので、何やら訳がわからない部分もあるでしょうが、まあ気になる方は実際にお読み下さい。

事前に思っていたよりは面白かったので、書名一覧での評価は予想の2から3にするか迷う。

しかし、最近「評価3、易」が多過ぎるかもしれないので、あえて2にしますか。

特に強い印象を受けなかった本は、つい3にする癖がついてしまっている。

「3」の範囲がやたら広くて、「2」「4」が狭く、「1」「5」はめったに付けません。

以後少しはメリハリを利かせることを心がけます。

難易度についても、最近はやや根気がついて、わからない部分は飛ばし読みすることに慣れてきたので、「易」が多い。

まあ古典的著作は大抵「難」を付けますが、これも少し歯ごたえのあるものは「中」を意識して付けることにします。

追記:

当記事とは全然関係無いんですが、A・J・P・テイラー『第二次世界大戦の起源』(中央公論社)が講談社学術文庫で復刊されたようです。

初心者には少々厳しい内容ですが、やはり重要な本だと思いますんで、未読の方はこれを機に通読するか、もしくは品切になる前にとりあえず購入されては如何でしょうか。

それにしても、中央公論刊だった名著の版権譲渡が目立ちます。

営業上の御判断に口を挟むつもりはございませんが、買収前の中央公論社の世界史関連書籍に大いに親しんだ者としては、幾ばくかの物悲しさを覚えます。

そういえば、高坂正堯氏も最晩年はあまり中公から著作を出されませんでしたね。

どうせ読売傘下に入ったのなら、『ジョージ・F・ケナン回顧録』(読売新聞社)なんかは中公名義で復刊してくれませんかね。

今でも、とりあえずは一番応援したい出版社ではあるので、良書復刊とその長期在庫に淡い期待を持ち続けることにします。

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