カテゴリー「教科書・年表・事典」の37件の記事

『世界史B 新訂版』 (実教出版)

久しぶりに高校教科書の記事。

たまたま県庁所在地まで出かける用事があったので、ついでに教科書販売所に立ち寄り買いました。

奥付の執筆者を見ると、『フランス革命 歴史における劇薬』(岩波ジュニア新書)の著者である遅塚忠躬氏がまず目に付く。

あと松本宣郎氏は確かギボン『ローマ帝国衰亡史』(ちくま学芸文庫)の訳者あとがきで協力者として名前が挙げられていた人だったか?

全体的特徴を一言で言うと、詳しいです。

ものすごく。

太字(ゴチック体)になっている用語がやたら多い。

受験という観点からはいいでしょうが、やや消化不良気味になってしまうのではないかという懸念もある。

以下、例によってあれが太字だ、あれが太字じゃない、あれが載ってない、などということを適当に書き連ねます。

古代ギリシアのポリス、テーベがテーバイと表記されている。

エジプト中・新王国首都のテーベと区別するためか。

ただしアテネはアテナイとはなっていない。

シュリーマン、エヴァンズ、ヴェントリス、ローリンソンなど発掘者・解読者の名前も太字。

文化史では抒情詩のサッフォーだけでなく、アナクレオン、ピンダロスも太字。

ローマ史で、カエサルをユリウス・カエサルと氏族名を含めて太字。

451年カルケドン公会議で異端とされた単性説がエジプトのコプト派キリスト教徒の源流であると書いている。

背教者ユリアヌス帝が太字の教科書ははじめて見た。

インド史、マウリヤ朝首都パータリプトラ(現パトナ)は通常活字で、クシャーナ朝首都プルシャプラ(現ペシャーワル)が太字なのはなぜ?

東南アジア最初期の港市国家は「インド化した国家」で、林邑も「中国化」から「インド化」に方向転換し、国名もチャンパーにしたとの記述は面白く、注目に値する。

シャイレーンドラは国名ではなく王家の名であり、スマトラのシュリーヴィジャヤを支配したと書いてある。

それについて、7~8世紀にシュリーヴィジャヤからジャワに進出したという説と、8世紀にジャワからシュリーヴィジャヤに進出したという説を両方紹介している。

たとえ煩雑でも、こうしたことをしっかり述べてくれるのには好感。

北魏・唐の均田制と日本の班田制、および租庸調制の比較図が載っている。

史料集並みの詳しさだ。

同時期、門閥貴族による政界支配に関して、貴族の拒否権行使機関という門下省の役割を明記しているのは渋い。

近代以前のアフリカ、ラテンアメリカ、オセアニアが独立した章で扱われている。

アフリカをイスラム史、ラテンアメリカを大航海時代の章に押し込めるのは、やはりこれからは止めた方がいいでしょうね。

アッバース朝初代カリフ、アブー・アルアッバースは有るが、二代目のマンスールは無し。

ウマイヤ朝創始者のムアーウィヤは大抵の教科書に載っているのに、アッバース朝の両者があまり載っていないのは不思議。

後ウマイヤ朝がカール大帝治下のフランクと対決、フランクは778年イスラム教徒のサラゴサ侵攻を撃退したが9世紀初めバルセロナを奪われた、って細か過ぎますよ・・・・・。

そのイベリア半島にあり、ローマ・イェルサレムと並んで三大巡礼地とされたサンチャゴ・デ・コンポステラが載ってる。

サンチャゴ(サンティアゴ)というと「チリの首都?」としか思い浮かばない人が多いでしょうが、「聖ヤコブ」の意味で、もちろんこちらの方が先に付いたんでしょう。

第3回十字軍の独帝フリードリヒ1世が太字、1282年「シチリアの晩鐘」も。

実在論と唯名論の対立である普遍論争の説明が、わずか2、3行ながら極めてわかりやすい。

コロンブスが出港したパロスという地名を出し、到着したサンサルバドル島を太字にする意味はあるんでしょうか?

またマガリャンイスは慣用でマゼランだけでいいような気が・・・・・。

シーザー→カエサル、ジンギスカン→チンギス・ハンと違って、定着しないですよ、これは。

「近代世界システム」、「中核と周辺」という概念の説明があり、新大陸アメリカだけでなく、東欧も再版農奴制によって「周辺」となったが、ただしアジアは従来の貿易システムを19世紀まで維持したと書いてある。

こういうやや詳しい経済史の記述は良いと思います。

その16世紀以降の東南アジア交易圏にあった「南スラウェシのマカッサル」という国名が太字。

知らんなあ・・・・・。

ルターをかくまったザクセン選帝侯フリードリヒの名前を出すのはいいですが、太字にするのはどうかと・・・・・。

イグナティウス・ロヨラではなく、単にロヨラ。

イグナティウスはファーストネームだから他の人名と同じく省略しても可ということでしょうか?

主権国家の諸段階で、社団国家から国民国家への移行が書かれており、それはいいんですが、この変化が必ずしも肯定的なものでは無かったことを触れて頂けるともっと良かったと思うのですが、それは教科書に望みすぎか。

16世紀を大航海時代およびヨーロッパの膨張と特徴付け、それに対して17世紀は全般的危機の時代と定義。

初心者にとってはこうした大まかな傾向を提示してくれるのはわかりやすい。

フランス革命の意義という節で、社会的不平等を是正しようとする民主主義の理念が以後の世界に大きな影響をおよぼすことになったと認めつつも、社会各層の利害対立から反対派を暴力で排除しようとする恐怖政治が生まれ、それが20世紀のロシア革命でもくり返されたと書いているのは、いかにも遅塚氏らしい含蓄に富んだ叙述だと思いました。

1806年、プロイセンがナポレオンに大敗したイエナの戦いが太字。

これは前年のトラファルガーの海戦、アウステルリッツの戦いと同列に扱うということか。

英国の自由主義改革で、定番の史実の他、1833年ウィルバーフォースらの運動で英植民地での奴隷制が廃止されたことを記している。

1832年第1回選挙法改正でグレイ首相の名前を出すのなら、1846年穀物法廃止時のピール首相も載せて欲しかったところではある。

ドイツ帝国の「外見的立憲主義」に触れていますが、これはあまり断定的に書かないほうが宜しいのではないでしょうか?(ニッパーダイ『ドイツ史を考える』(山川出版社)参照)。

タイのラーマ5世(チュラロンコン大王)は通常活字ではなく太字でいいのでは?

壬午軍乱が太字じゃなく、甲申事変が太字なのは清水書院の教科書と逆ですね。

実質李朝最後の国王である高宗、この人昔は「李太王」なんて書かれてましたが、最近は全くこの表記を見なくなりましたね。

これは日韓併合後に日本が付けた名でしたっけ?

帝国主義時代の「公式帝国」と「非公式帝国」という区別を述べ、後者の例として英国の経済支配下にあったアルゼンチンを挙げている。

そんな用語、はじめて見ました。

1916年、第一次大戦中、アイルランドの対英イースター蜂起が有り。

こんな細かいのよく載せますね・・・・・。

スペイン人民戦線内閣首相のアサーニャが太字。

仏のブルムと違ってこれはやや?マークが付く。

第二次世界大戦の部分では、インド国民会議派の対英協力拒否の「インドを立ち去れ」運動と、アフリカでのケニア・アフリカ人同盟などの運動が載せられているのが目を引く。

戦後史、アフリカ独立の項、省略されがちな、北アフリカのリビア(1951年)、チュニジア・モロッコ・スーダン(56年)に触れている。

カストロだけでなくゲバラも太字。

ゲバラは載せるだけでいいんじゃ・・・・・。

ガーナのエンクルマはともかくギニアのセク・トゥーレが太字なのも同様。

ポルトガル体制変革に伴い、他のアフリカ諸国から大幅に遅れて独立した国として、よく挙げられるアンゴラ、モザンビークだけでなく、かなりマイナーなギニア・ビサウが太字で載せられている。

これも細かい。

それでいて80年独立のジンバブエ、90年ナミビアは普通活字なので、基準がやや不可解と感じる。

1989年就任の米大統領ブッシュの息子で、2001年就任大統領をブッシュJr.と表記。

この親子ねえ。

ファーストネームが同じ「ジョージ」なんですよ。

じゃあミドルネームで区別しようと思ったら、父親が「ハーバート・ウォーカー」で息子が「ウォーカー」ですって。

つまり、ジョージ・H・W・ブッシュとジョージ・W・ブッシュ。

ややこしいんだよ!!!

少し締まらない感じても本書のようにブッシュ・ジュニアと書いた方がいいか。

近現代史で君主以外の政治家が世襲した場合、(慣習的に姓名共に記述する中韓両国以外では)普通の名前に加えてファーストネームを憶える負担が加わるのが面倒ですね。

シリアを長年統治した大統領は「アサド」と憶えておけばよかったのが、今は父親がハフェズ・アサド、息子の現大統領がバッシャール・アサドと記憶しないといけない。

政権崩壊前、世襲が噂されていたエジプトのムバラク大統領ですが、息子が確か「ガマル」だったはずだが、肝心の父親のファーストネームって何だったか?(追記:外務省各国地域情勢で確認したらモハメッド・ホスニと書いてあった。)

エジプトで思い出したが、本書ではサダト大統領はなぜ太字でないのか理解に苦しむ。

エジプトを急進派諸国陣営から穏健派諸国陣営に移行させ、イスラエルと平和条約を結び、中東和平を大きく前進させた大政治家なのに。

ダライ・ラマ14世が太字。

これは、まあ最近よくニュースに出るから適切でしょう。

終わりです。

いつもの通り、全く脈絡無く、埒も無いことをあーだこーだと書きました。

とにかく詳しい。

歴史用語がぎっしり詰まっている。

個人的感覚では、山川の『詳説世界史』東京書籍教科書を上回る詳細さを感じた。

私はこういうタイプの教科書が好きだし、結構楽しめたが、苦手意識を持つ人が読むとアレルギーを起こすかも。

まあ、そういう感じの本です。

ただ、機会があれば手に取ってみるのも悪くないでしょう。

|

水村光男 編著 『新版 世界史のための人名辞典』 (山川出版社)

1991年初版、2010年新訂版。

編著者以外の名が載っていないが、ひょっとして一人で書いているのか?

だとしたら凄い。

全1914項目。

世界史教科書にある人名はすべて取り上げ、さらにかなりの数を加えたと書いてある。

(ただし日本人名はすべて除外。)

本の厚さからするとかなり粗い内容かなとあまり期待していなかったのだが、目を通していくと、人名のみに項目を絞っている分、相当詳細であり、かなり使える。

説明本文中では、くどいくらい年号を括弧内で注記しているが、これは本書を調べもののつもりで引いた際有益・適切で、とても良いと感じる。

前書きで、これまでの辞典では簡略過ぎて人物像が伝わらないか、浩瀚に過ぎて簡便性に欠くかのどちらかだったが、本書ではその中間を目指したという意味のことが書かれているが、その試みは十分成功している。

ただちょっと気になるところもないではない。

中国皇帝は基本的に廟号(高祖・太宗など)を本項目に立て(諡号[武帝など]で呼ばれるのが慣例になっている皇帝は除外)、明清では「一世一元の制」により元号による名(洪武帝・康熙帝など)で記載という方針。

これがねえ・・・・・・。

巻頭の凡例で読んだときは、「ああ、そうなんですか」と思っただけでしたが、いざ本文を眺めてゆくと・・・・・。

違う王朝の「太祖」が並列して載せられていて、頭の中の整理ができるという面もあるんですが、劉邦や李淵は「高祖」とするより本名で載せた方が良くないですか?

曹操は形式的には皇帝に即位してないので死後贈られた「武帝」ではなく本名で項立て。

一番不自然に思ったのは、劉備が何と「昭烈帝」で載っているのを見たとき。

「昭烈帝」って・・・・・。

三国志演義でもあまり出てこない称号ですよ、これ。

もちろん、「劉備→昭烈帝を見よ」とは書いてますがね。

(ただ五十音順で「昭烈帝」のすぐ後に「諸葛亮」が来るのは、ただの偶然だろうが面白い。)

あと、韓国・朝鮮の人名が、現代史の人物含め、すべて漢字の日本語読みで統一されている。

しかし金正日を「キム・ジョンイル」ではなく「きん・しょうにち」、盧泰愚を「ノ・テウ」ではなく「ろ・たいぐ」で引くのは、今となっては相当な違和感。

私はテレビ・ニュースで全斗煥「ぜん・とかん」が「チョン・ドファン」に変わったのを経験した世代の人間ですが、韓国・北朝鮮建国後の人名はもう日本語読みでは妙な気がしてしまう。

他に特徴はというと、ごく最近の政治家の項目がやたら詳しい。

ブッシュ(子)や盧武弦やシュレーダーなどはともかく、パナマのノリエガ将軍とか、政治家ではない故ダイアナ妃まで相当の紙数を使って載ってる。

加えて現職のオバマ、メドヴェージェフ、李明博、馬英九も長い。

今年4月に墜落事故で死亡したポーランドのカチンスキ大統領のことまで載っている。

(以上は別に悪いとは全然思わないが。)

以下、他に気付いたことを何点か。

ヴェトナム国のバオダイ帝の生没年をたまたま眺めてみると、この人1997年まで生きてたんですねえ。

同じく生没年関連ではアルジェリア独立の指導者で1965年クーデタで失脚したベン・ベラですが、「1918~」という表記なので、まだ生きてるのか。

(追記:2012年4月12日の朝刊に訃報記事が載っていました。享年95歳だそうです。)

広開土王の項、碑文の日本による解読に改竄・歪曲の可能性が高くなってきているという意味のことが書かれているが、私は以前日本軍が取った拓本に疑問が呈されてきたが最近はその説は完全に下火になっているという理解だったのだが、また逆になってきてるんでしょうか?

ちょっとこの辺、よくわからない。

「モルトケ」がいわゆる大モルトケだけで、小モルトケが項立てされていないのは残念。

チョムスキー、デリダ、ソンタグなどの知識人も載っている。

モンロー宣言のジェームズ・モンローの直後、同じくらいの文章量でマリリン・モンローが載っている。

ルイ・ブランが第二帝政崩壊後帰国し、国民議会議員としてパリ・コミューンに反対したなんてことは本書で初めて知った。

かなり良い。

客観的記述だけでなく、著者の個性が相当出た文章で、ややクセを感じる部分もあるが、豊富なエピソードを交えた説明文は大いに有益だし、眺めていると楽しい。

帯に「読む辞典」と書かれているが、宣伝文句に違わぬ出来。

1万4000項目を超えるという『角川世界史辞典』に比べれば、収録数は圧倒的に少ないし、人名しか取り上げられていないが、場合によっては本書の方が使えるのではないか。

これで定価1575円は安い。

買って手元に置いておくのも悪くないんじゃないでしょうか。

|

『高等学校 世界史B 改訂版 100テーマで視る世界の歴史』 (清水書院)

忘れた頃にやってくる高校世界史教科書の記事。

教科書にしては珍しくサブタイトルが付いているが、それが記述形式をよく表わしている。

「秦・漢はどのように中国を統一したのか」「1848年の革命はヨーロッパをどう変えたか」というふうな文章形式の章名になっており、それが100ちょうど集まって本文を形成している。

そして1節がすべて見開き2ページにまとめられているのも大きな特徴。

普通の節の合間に「コラム 民衆の歴史」と題して社会史的記述を挿入している。

あと巻末に「テーマ学習」として「砂漠化と緑化」「世界の飢餓と貧困」「地域紛争中のパレスティナ問題」が三つあっておしまい。

奥付の執筆者名を見ると、大久保桂子さん(中公新版世界史全集『ヨーロッパ近世の開花』の著者)と芝健介さんが聞いたことがあるなあというくらい。

ざっと見たところ、あまり詳しい用語は載っていない。

初学者や苦手な人には向いているかもしれない。

第1章「世界史への招待」および第2章「君たちの時代」は文字通りイントロダクション的な章で、「年の表示はどのようにして決められたのか」「歴史はどんな態度で学べばよいか」など9節。

第3章「地域世界の形成と交流」はおおむね15世紀までの各地域の歴史(ただし中国は唐末10世紀まで)で21節。

第4章「地域世界の変容と世界の一体化」は16世紀からフランス革命まで、20節。

第5章「近代と国民国家」はフランス革命から第一次大戦まで、19節。

第6章「世界戦争の時代」は第一次大戦・戦間期・第二次大戦終結まで、11節。

第7章「現代の世界」は第二次大戦後から現代まで、20節。

以上合計でちょうど100節です。

近現代史で半分以上、7割を占めていることになる。

なお、各節ページの左下スミに世界地図で該当地域に印を付けている工夫が目を引く。

以下、例によって本文を見て適当な感想を書き連ねてみます。

実質最初の章である第3章が、オリエントではなく中国史から始まるのが新鮮。

中国古代文明で黄河流域以外の河姆渡遺跡、良渚遺跡、三星堆遺跡が太字で載せられている。

私が高校生の頃は、全く出てこなかったはずです。

劉備が建てた王朝が蜀ではなく蜀漢と表記されている。

これは今まで教科書では見たことがない。

唐の部分では羈縻政策(周辺異民族に自治を認める政策)が太字。

文化史では茶の作法をまとめた『茶経』も。

何かアンバランスだなあ・・・・・。

アッバース朝カリフの権威を認めない王朝の例として後ウマイヤ朝・ファーティマ朝の他にイドリース朝の名を出しているのも、簡略な教科書にしては唐突感がある。

何を重視するかは執筆者様の判断ですから、素人があれこれ口を挟むことじゃないかもしれませんが、どうも言わずにおれない。

一方、フランク王国カロリング朝で名の出る君主はカール大帝のみ。

カール・マルテルもピピン3世もバッサリ省略。

その前にゲルマン民族大移動のところで、本文中に出てくる部族名はフランクのみ。

神聖ローマ帝国成立も、うっかり見逃すくらい小さな扱い。

中国史は、第3章で扱われるのは唐滅亡までだと上で触れましたが、第4章の該当ページでは、宋の統一と並んで内陸アジアでのトルコ系民族発展を同じ節で述べている。

これはなかなか興味深い。

宋代、都市文化の繁栄を描く『清明上河図』が太字。

かと思えば、モンゴル帝国で出てくる君主はチンギス・ハンとフビライだけ。

言葉は悪いが、中学校の教科書みたいだ。

高麗の文化で、「象嵌青磁」が太字なのに「高麗版大蔵経」がそうじゃない。

わからん・・・・・。

いっその事、どっちも要らないくらいじゃ・・・・・。

続く王朝の名が李朝朝鮮となってる。

「李氏朝鮮」はもう死語なんですかね。

オスマン帝国の各宗教宗派別自治組織「ミッレト」は、この教科書にも載っているということは、もう高校世界史必須用語か?

ムラービト朝とムワッヒド朝が、イスラム史には出てこず、アフリカ史のページに載ってる。

要はエジプト以外はすべてアフリカ史で載せるということらしい。

ガーナ・マリ・ソンガイ・モノモタパという定番の王国名の他、チャド湖周辺に9世紀栄えたカネム王国の名が出ている。

近世ヨーロッパ史でも大胆過ぎる省略が目に付く。

大航海時代の後、ページをめくると近世政治史の節に入る。

ここで何か強い違和感を感じて首を傾げる。

「何だろうなあ」と思って読み進めていくと、ほとんどの教科書で大航海時代のすぐ近くにあるルネサンスの章が無いことに気付いた。

17・18世紀や19世紀のヨーロッパ文化と同じく、ルネサンス文化史も政治・経済史の後にまとめられている構成。

これには相当驚いた。

該当節もスカスカ。

ダンテ・ペトラルカ・ボッカチオ・ブルネレスキが出てこず、ボッティチェリとレオナルド・ダ・ヴィンチは欄外図の説明で名が載ってるだけ、ミケランジェロは別のページのコラムにのみ出てくる。

イスラム文化史でイブン・シーナ、イブン・ルシュド、イブン・バットゥータ、オマル・ハイヤームが出てくるのに、ルネサンス文化史がこれで大丈夫ですかと失礼な感想を抱いてしまう。

政治史も相当なもの。

巻末索引で見たらとにかく基本的王朝名が載っていない。

カペー朝はあるが、ヴァロワ朝・ブルボン朝は無し。

『世界史B用語集』(山川出版社)の記事でダンテとブルボン朝の載っていない教科書というのは本書だった模様。)

プランタジネット朝とテューダー朝があって(テューダーは確か索引には無かったが本文を確認したら有り)、ステュアート朝は無し。

人名ではクロムウェルが本文中には記述無し。

1789~95年間のフランス革命史を見開き2ページで片付けるのは酷いというか凄いというか。

近現代史、朝鮮史のページ、壬午軍乱(太字)、甲申事変(普通)が載っているのはいいが、片方だけ太字にするバランスがよくわからない。

まだ逆の方が理解できる気がする。

イスラム世界での民族運動の節。

19世紀ナショナリズム思想がバルカン地域に流入し、セルビア正教会がオスマン政府だけでなくギリシア正教会へも反発を強めて独自のキリスト教会を中心にした国民国家建設に向かったが、これは宗派別運動だったため、西欧的民族運動とは異なった面を持ったという説明は面白い。

18世紀オスマン帝国で徴税請負制度が広まり、地方有力者アーヤーンが勢力を拡大したとあるが、これもこの本のレベルからするとアンバランスな・・・・・。

北インドのイスラム回帰運動指導者で、シャー・ワリーウッラーが太字になってますが、それ一体誰なんですか???という感じ。

上記リンクの山川出版社用語集では頻度1、この教科書しか載せていない。

何だかなあ・・・・・。

朝鮮の実学大成者、丁若鏞も不可解。

ロシア革命指導党派が、ボリシェヴィキではなくボルシェヴィキ。

何か古さを感じる。

現代史で四次の中東戦争が1節でまとめられているのは、初心者には読みやすくて良い。

しかし他の部分では、例えばド・ゴールによる第五共和政成立と英サッチャー新保守主義政権が同じページに入るような次第なのは、簡略化も度が過ぎるというもの。

コラムは「アヘン」「ペスト」「女性参政権」など興味深い項目がいくつもある。

しかし本文は・・・・・・。

本書だけに頼るのは不安過ぎる。

他の教科書のように、漢字以外の固有名詞にアルファベットの綴りが小さく添えられていないのも欠点。

思い切って内容を絞り込んでいるのが最大の特徴ですが、私にとってはもう一つでした。

あんまり手元に置きたい本ではないです。

|

『もういちど読む山川日本史』 (山川出版社)

『もういちど読む山川世界史』は紹介済み。

今回これをパラパラと飛ばし読みしてみた。

重要語句が太字になっておらず、その点反ってわかりにくく感じるのは世界史と同じ。

しかしそれ以外では思いの外、好印象をもった。

本文の間に挟まれている補注でこれまでの通説・常識と最新の学説のズレを紹介してくれている部分が実に面白い。

世界史の場合はほとんどの人の予備知識が乏しいので、こういうことは不可能。

この部分を拾い読みするだけでも手に取る価値はあります。

通読を目的とするなら世界史よりはこちらの方が向いてるとも感じます。

なかなかいいんじゃないでしょうか。

『詳説日本史』はやたら細かい記述が多いですから、この簡略版シリーズでは世界史より効用が高い。

気が向いたら買ってもいいでしょう。

ただ社会人がもう一度日本史の基礎を勉強したいと思う場合、最善の入門書は本書よりも小学生向けの学習漫画「日本の歴史」だと思います。

「おいおい・・・・・」と呆れられたり、「馬鹿にすんな!!」と怒られるかもしれませんが、事実そう思える。

近所の公共図書館に行って、「うちの子供に読ませます」みたいな顔をして借りて、家に帰って自分で読んで下さい。

予備知識ゼロの状態から、基礎の基礎を作るためにはそれが一番楽だし、頭にも入る。

個人的には小学館から出てるのがお勧め。

それから本書にじっくり取り組めば良いかと思われます。

なお、世界史の漫画はよく知らないんですよねえ・・・・・。

集英社文庫で漫画版「世界の歴史」が10巻くらいで出てまして以前一部を立ち読みしたことがあったんですが、「うーん」と微妙な感想を持ちました。

このブログは低レベルとは言え、一応高校世界史は大体理解しているという前提での読書案内ですが、「カエサルって何人?」「ビスマルクって何した人?」という方が最初の取っ掛かりとして読むにはいいのかな。

|

『改訂版 世界史B用語集 [2008年版]』 (山川出版社) その2

その1の続き。

ハミルトン(1)は低い。

ジェファソンとの対比で知っておくべき人物と思える。

それはまあいいとしても、ワシントン(10)が載っていない教科書は検定を通してはいけない気がします・・・・・。

(初代大統領としてでなく、独立戦争の箇所で頻度10。巻末索引で確認しても同じ。)

フンボルトベルリン大学[参考]扱い。

これには驚いた。

プロイセン・フランス戦争(11)という表記が主、括弧して普仏戦争と書いてある。

前にも書きましたが、この表記法すごく嫌いなんですよ。

ちなみに新聞の見出しで「米露」のことを「米ロ」と書いてあるのもゲンナリします。

ポグロム(2)、ユダヤ人への集団暴行・迫害のこと。

頻度は低いが、これは知っておいた方がいい言葉だと思います。

しかしホロコースト(5)はいかにも低い。

これは一般常識として必ず理解しておくべき言葉でしょう。

1870年代以降の世界的な不況(大不況)(6)、1873年からの、帝国主義の背景をなす不景気だが、高校時代、これは『世界史A・Bの基本演習』(駿台文庫)などの参考書でしか見た覚えが無い。

フランス社会党(統一社会党)(5)は何でこんなに掲載教科書が少ないのか?

と思ったら、別の箇所では(9)だった。

ラサール(2)が1863年全ドイツ労働者協会を結成、ベーベル(2)が1869年マルクス主義的な社会民主労働党(アイゼナハ派)結成、両党が合併して1875年折衷的ゴータ綱領でドイツ社会主義労働者党結成、それが1890年マルクス主義的エルフルト綱領でドイツ社会民主党に改称、と昔はやたら細かい社会主義政党の歴史を教えられたものです。

ロックフェラー(3)カーネギー(1)モルガン(1)ということは、カーネギー・モルガンが載っているのは三省堂教科書のみか。

ウラービー(オラービー)の反乱(9)、もう「アラービー・パシャの反乱」とは一切言わなくなったのか・・・・・。

辛亥革命直後、1912年宋教仁が中心となって結成した国民党(9)

前にも書いたようにこの「最初の方の国民党」の頻度が高いのは相当不可解。

直後の1914年結成された中華革命党なんて(3)ですよ(別の箇所では(4))。

レンテンマルク(7)なのは高い。

しかし関連事項のシュトレーゼマンドーズ案(10)

この二つは全教科書に載せておいた方がいいんじゃないでしょうか。

ブハーリン(1)があって、ジノヴィエフ、カーメネフがないのはバランスに欠けてる気がする。

黄埔軍官学校[参考]なのは如何なもんでしょうか。

これは載せるべきでしょう。

それでいて浙江財閥(11)なのは解せない。

ネヴィル・チェンバレン(11)なのはいいとしてダラディエ(8)

ミュンヘン会談出席者として名前を出さざるを得ないというわけなんでしょうが、その1の記事で書いた第二回三頭政治のレピドゥスと似たようなもんですね。

戦後史の項目を見ていて、「ヴェトナム」がすべて「ベトナム」になっているのに強い違和感(「ベトナム戦争」、「南ベトナム解放民族戦線」、「ベトナム和平協定」等々)。

これはやめてもらえませんかねえ。

キング牧師(11)に驚く。

私が高校生の頃は確かゼロのはず。

ブレジネフ(8)なのはちょっとまずいんじゃないでしょうか。

アンドロポフ(1)チェルネンコ(2)はともかく、米国と並ぶ超大国だったソ連の最高指導者を十数年も務めたわけですから一応全教科書に載せるべき。

逆にその補佐役で首相を務めたコスイギン(3)なんて要らないでしょう。

同時多発テロ(11)ターリバーン(10)イラク戦争(10)

こういうのも教科書に載るようになったんですねえ。

私も歳をとりました。

最後に今回一番驚いたことを。

ニューディール政策のところで、ケインズ(1)となっている。

その時は「ふーん」と思っただけだったが、後ろの方のページにある「現代文明」の「社会科学」の項目を見ると載っていない!!

驚いて巻末の索引を見ても頻度1!!!

これにはひっくり返りそうになった。

どうせ「政治・経済」で教えるからとか、そんな問題ではない。

一般常識として絶対知っておくべき人名のはず。

今の普通の経済ニュースでも「ケインズ政策は有効だ」「無効だ」なんてやってるでしょう。

本当に載ってないんでしょうか?

この用語集に採録してないだけじゃないんですか?

できればそうであって欲しいと思わざるを得ません。

あーだこーだと埒も無いことを書き連ねましたが、社会人でも一冊持っていると便利です。

800円代で買えますし、角川の世界史辞典が高く感じれば、これが簡易辞典として使えます。

なお私は、ここで紹介してるような世界史関係の本を読んだ後、この用語集の関連事項をざーっと眺めるということをよくやるんですが、効率よく史実や年代が確認できてなかなか良いです。

教科書と違って手軽に入手できますから、とりあえず手元に置いておかれたら如何でしょうか。

|

『改訂版 世界史B用語集 [2008年版]』 (山川出版社) その1

2002年に買った『世界史B用語集』をこの度8年ぶりに買い換えてみました。

奥付を見ると、「2008年第1版第1刷  2010年第1版第3刷」となっている。

前のやつは「2000年第1版第1刷  2002年第1版第5刷」。

毎年ではなく、教科書の検定ごとに改訂するはずだから、2000年から4年ごとの改訂で今回が2度目といったところか?

まずすぐ気付くのが、装丁について。

自分の高校時代以来、カバー部分が本体から少しはみ出していたのが、今回は本体と同じ大きさに。

次に用語の登場頻度。

すべての教科書のうち、何冊に載っているのかを用語のすぐ後に載せているのが、この本の最大の特徴だが、前回は最大頻度が19だったのだが、今回は11

私の頃の冊数がいくつだったのかは忘れたが、書店で立ち読みしたのを記憶している限り、今回まで減ったのを見た覚えはないので、なぜか物悲しい気分に襲われる。

もっとも世界史教科書が19種類もあるのが「バブル的」かもしれませんが。

あと、最近削除された用語でも解説が必要と思われるものには[参考]として載せてあるのが目に付く。

以下、ざーっと眺めた上で記した適当な感想。

(括弧内は頻度。複数の箇所に載っている場合、最も高い数字を書いているつもりですが見落としがあるかもしれません。「あれっ」と思うほど頻度が低い場合、他の箇所で主に載っている可能性がありますので注意が必要です。)

アッカド人(10)ということは載ってない教科書があるということですか・・・・・・。

ミタンニ(9)フルリ人(2)について、支配層は印欧系としながらも、最近は支配層含め全てフルリ人との説があると書いてあるのは、中公世界史全集『人類の起源と古代オリエント』の記述と同じ。

私の高校時代には聞いたこともなかったが、こういう新しい学説が教科書にも徐々に反映してるんだなと実感。

上記アッカド人と同じく、ハンニバル(10)が載ってない教科書に不安を感じる。

逆にレピドゥス(8)東京書籍の教科書の記事で書いたように、不要の気がしないでもない。

ローマ帝国の「3世紀の危機」(2)という言葉は、教科書レベルではこれまで見た記憶無し(前回の用語集でも収録ゼロ)。

マクシミヌス(1)が軍人皇帝の始めとして載っている。

この人は塩野ローマ史『迷走する帝国』に出てくるマクシミヌス・トラクスのこと。

私の頃の山川『新世界史』には、確か(セプティミウス・)セヴェルス帝の名が載っていたと思うが、今はどの教科書にも載っていない模様。

拓跋国家(1)というのがあって、「何ですか、それは?」と思い説明を見ると、「北魏以来の北朝から、隋・唐にいたる一連の王朝のこと。支配層には拓跋氏出身者が多く、国家の仕組みにも共通点が多かったことからの呼称。」とある。

後漢滅亡から北宋成立まで、この時期の中国史については、門閥貴族が勢威を振るい、皇帝権は弱体で、みたいなことをしっかり頭に入れればいいので、こういう見慣れない用語は無理に載せなくてもいいんじゃないでしょうかと思う(一種類の教科書だけですが)。

オゴタイ・ハン国(8)について、「オゴタイ系の勢力は存在したものの安定した政治勢力とならなかったため、この国は事実上存在しなかったとの説もある」と「ええっ!!」と思うことが解説に書いてある。

こんなこと、杉山正明先生の『大モンゴルの時代』でも読んだ記憶無いですが・・・・・。

(忘れてるだけか・・・・・?いや、しかしやはり覚えは無い。)

(追記:以上やはり杉山氏の説のようです。完全に忘れてますね・・・・・。)

モンゴル人第一主義がたったの(3)(これも杉山先生の影響?)。

でも「タタールの平和」(3)だ。

マテオ・リッチ(11)アダム・シャール(9)フェルビースト(7)ブーヴェ(8)カスティリオーネ(11)と、中国で布教したイエズス会宣教師の頻度がやたら高いのは、私の頃と同じですが、何でなんでしょうね?

「イスラム」がすべて「イスラーム」になっているのが正直鬱陶しい。

ハールーン・アッラシード(10)も満数じゃないのか・・・・・。

サッファール朝(1)の説明で、ターヒル朝(これは頻度ゼロ)から自立して建国したイラン系初のイスラム王朝と書いてあるが、じゃあターヒル朝はイラン系じゃないのか?

どうだったのか忘れた。

イドリース朝(2)ザンギー朝(2)は高校時代全く聞いたことが無かった。

アッティラ(8)って低過ぎませんか?

ユーグ・カペー(8)も。

フランク王国(11)について、「ゲルマン諸国家中、イギリス王国とともに長く存続し」と書かれていて、言われてみれば初歩的過ぎて盲点だが、確かにそう。

他は大抵イスラム、東ローマ、フランクに滅ぼされているので、歴史の継続性から見れば昔から英国はヨーロッパの別格だったことがわかる。

(フランク=フランスではないでしょうが、フランク最初の根拠地としての重要性からするとフランスも。)

神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世(2)フリードリヒ2世(3)

これはもっと高くてもいいような・・・・・。

ダンテ(10)ブルボン朝(10)などが満数でないのは理解に苦しむ。

私は文化史について何か言える人間ではないが、ルネサンスの項でティツィアーノが載ってないのには「あれっ」と思った(旧版では頻度3で載ってる)。

タイの現王室、ラタナコーシン朝(チャクリ朝)(7)の別称として「バンコク朝」が載らなくなっている。

これは何か理由があるんだろうか?

その創始者ラーマ1世(1)も昔は「プラヤー・チャクリー」という名が載っていたが、ロン・サヤマナン『タイの歴史』には、確かこれは本名というより一種の称号だというようなことが書いてあった記憶がある(ただしうろ覚え)。

時代を遡って、スコータイ朝のラームカムヘーン(1)王も消滅寸前ですね。

『角川世界史辞典』で同項を引くと、「タイ文字の制定者、理想の統治者として王の功績を記したラームカムヘーン碑文は、最近19世紀の偽作との疑いが出された」と驚くようなことが書かれてあるが、ひょっとしてこうしたことも関係しているのか?

ジギスムント[参考]扱いなので少々驚いたが、前回からすでに載ってなかった。

「金印勅書」のカール4世の息子だし、コンスタンツ公会議を主催したりと、この人結構重要だと思うんですけどね。

マゼランを敗死させたフィリピンの首長ラプラプ(2)が載っているのが目を引く。

近代世界システム(4)再版農奴制(4)社団国家(1)17世紀の危機(6)(環)大西洋革命(4)と、こういう用語も載るようになったんですねえ・・・・・。

「17世紀の危機」なんて半分以上の教科書に載ってるわけですか。

コーヒーハウス(9)なのがやや不可解。

世論形成の場として重要なのは『コーヒーが廻り世界史が廻る』(中公新書)でもわかりますが。

近代以降は次回に続きます。

(追記:続きはこちら→その2

|

中谷臣 『世界史論述練習帳new』 (パレード)

発行はパレード、発売は星雲社。

東大、京大、一橋、筑波などの論述試験対策の参考書。

問題を実際解いたわけではないが、読んでいくと結構面白い。

まず問題文が要求しているものを厳密に読み取ることから始めて、簡単な概念図である「構想メモ」を作り、そこですぐには思いつかない空白の部分を、基本的に教科書にある知識だけで埋めていく説明過程が、非常に興味深い。

挙げられている例題では、第11問「唐から宋への時代の政治・軍事制度の変化」(京大)、第13問「西ヨーロッパ・イスラム・南アジアの10~17世紀の政治体制の変化を略述」(東大)、第32問「“古代”“中世”“近代”というヨーロッパ史をモデルに設定された時代区分をイスラム世界に適用した場合の“中世”という時代の政治体制・思想状況の特徴を『マムルーク』『スーフィー信仰』という言葉を使って述べる」(一橋)などが非常に面白かった。

末尾別冊の「基本60字」は盲点となる史実や歴史の因果関係を簡潔に記してあり、知識の整理・確認のために大変有益。

加えて、補足説明では時にはっとするほど鋭い指摘がある。

一部首を傾げたり、納得しにくいようなところがあるが、基本的には良い。

社会人が読んでも役に立つ本。

| | コメント (0)

『もういちど読む山川世界史』 (山川出版社)

山川出版社の世界史教科書を一般読者向けに再編集したもの。

去年8月頃出て、かなり売れた本。

どんなもんか、試しに手に取ってみた。

適当にページをめくってみて、すぐ気付くのが、普通の教科書と違い、重要な歴史用語をゴチック体(太字)で記していないこと。

これはちょっと頂けない。

一般向け書物ということでそうしたんでしょうが、何が重要なのかについて目安が無く、反って判り辛くなっている。

本文の叙述もやけに簡略に思え、ひょっとして世界史Aを基準にしているのか、とも思った。

地図や系図が少な目なのもマイナス点。

目次を眺めると、古代・中世・近代・現代とはっきり時代区分して章分けしているのが大きな特徴。

「近世」が無いのは、いろいろややこしい議論があるからか。

中国では後漢までが古代で、これはまあ順当だが、中世の部分に三国時代から明・清まで放り込んでいる。

ムハンマドからヨーロッパ勢力の進出までのイスラム史も中世にすっぽり入っている。

結局ヨーロッパ史ではルネサンスと大航海時代の15・16世紀から近代、他の地域では18・19世紀頃ヨーロッパが進出してきてからが近代という区分のようだ。

これが穏当なのか適当過ぎるのか、よくわからない。

個人的にはあんまりいいとは思えない。

評判に釣られてこれを買うより、『詳説世界史B』を大型書店の学参コーナーか山川出版社のウェブサイトで買った方がいい気がする。

しかし社会人がざっと通読できる範囲の量で、世界史のあらましを理解するために手に取るという目的のためなら、こちらがいいのかもしれない。

| | コメント (0)

佐藤幸夫 『完成350 世界史年代記憶術』 (代々木ライブラリー)

去年12月に出た、割と最近の本。

著者については何も知らない。

東洋編と西洋編が完全に分かれているのが特徴。

ゴロは覚えやすい方だと思う。

しかし数は物足りない。

特に古代オリエント。

アケメネス朝の統一以前が実質ゼロなのには首を傾げる。

ただ、末尾付録の同年・同時代一覧表と国別の王朝(政治体制)年表は中々良い。

悪くはないと思うが、どうも決め手に欠ける印象。

やはり山村良橘『世界史年代記憶法』を復刊してもらえないでしょうか。

| | コメント (0)

中谷まちよ 『世界史年代ワンフレーズnew』 (パレード)

世界史年代ゴロ合わせの受験参考書。

監修は中谷臣氏。

著者は奥さんでしょうか?

『センター世界史B各駅停車』と同じく、発行元はパレード、発売は星雲社。

本文70ページ余りのごく薄い本。

ザーッと眺めていると、よく出来てるなとニヤリとしてしまうものもあれば、これはちょっと憶えにくいかなと思うものもある。

山村良橘氏の『世界史年代記憶法』に比べると、ややインパクトに欠けるかと感じた事項もある。

(先に出たものをそのまま使えない以上、仕方ない面もあるんでしょうが。)

19世紀と20世紀で半分を占めるが、個人的にはこういう近代史の年号はゴロ合わせ抜きでかなり憶えているので、できれば前近代を充実させて欲しかったところ。

とは言え、総合的に見て悪い本ではない。

特に所々に挿まれている同時代の事項をまとめている部分は有益。

前近代において世紀単位で別地域の趨勢を述べている所などは、うーんと唸らされた。

定価900円なんで買って手元に置いて、折にふれ眺めるのも良いでしょう。

社会人でも買う価値はあると思います。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧