中公新版「世界の歴史」について
最終巻の記事から数ヶ月も経って、「今さら」という感じもしますが、中央公論社新版世界史全集の感想を改めて書いてみます。
(基本的に各巻の記事でバラバラに書いたことの繰り返しですが。)
高校で世界史を習って興味を持ち、より詳しく知るために手に取ったという、おそらく最大公約数的な想定読者の立場で言うと、ちょっと困るなという記述が多数ありました。
執筆者の方の専攻分野に関することを長々と述べたり、理解に苦しむ詳細なことに多くの紙数を割いたり・・・・・・。
名編集者と謳われた宮脇俊三氏が携わった旧版に比べると、そういった逸脱へのチェックが極めて甘いという印象を受けます。
また叙述形式として、旧来の政治史、伝記偏重の通史が否定されるのはやむを得ないとしても、あまりにも社会史・生活史・心性史・文化史だけに焦点を合わせ過ぎた、逆の偏りがしばしば感じられるのも残念。
まず基礎的な政治史を述べながら、新しい視野から見た歴史像を上手く付け加えるということも可能なはずだし、この全集でも出来のいい巻はそれに十分成功している。
それを達成しているビザンツ・イスラムなどの巻は、読者がその時代と地域に馴染みが薄いことを自覚しているがゆえに、著者が慎重に叙述を進めたせいだろうか。
しかし、これまでの世界史全集の中心だった中国史とヨーロッパ史の巻では失望することが多かった。
極めて役に立つと感じた巻とほとんど得たものが無いと感じた巻の差が極端。
全30巻を通読するのは相当骨が折れるし、「是非挑戦して下さい」とは言い難い。
むしろ前近代に関してはやはり旧版を読んだ方がいいんじゃないかという気さえしてくる。
なお、以下五段階評価で各巻を分類してみます。
一巻が何部かに分かれている場合、悪い方の部分に引きずられて評価してますので、各巻の記事で書いたよりも厳し目の評価になっていると思います。
「最高、言うこと無し」
「まあまあ、面白いです」
「普通・・・・・ですかね」
「いや、これはちょっと・・・・・」
「勘弁して下さい・・・・・」